エンジニアの語源

engine という言葉は内燃機関以前から存在する語であり、もちろん engineer という種類の人も(綴りはこの限りではないが)、内燃機関以前に存在していたようである。攻城兵器を engine と呼んでいたようなので、これを扱う人が engineer だったらしく、今でも engineer には工兵の意味がある。もっと遡るとたとえば馬車とか水車を作ったりする人も engineer だと思うのだが、こっちは出典がないのでぼくの妄想の可能性がある。

IT 系のエンジニアにたいして「IT エンジニア」でなく単に「エンジニア」というと眉をひそめる人は少なからずいるようだ。こんにちの engine の印象が内燃機関である以上、内燃機関に触れることのないアプリケーションプログラマや Web プログラマまでもがエンジニアであることに違和感を覚える人についてその感覚はわからないでもないのだけど、もともと engineer が内燃機関にかかわる技術者を指さなかったのだから、IT エンジニアがなんの修飾語もなしに単にエンジニアと名乗るのが適切でないなら、たとえば自動車の整備をする人もまた同じように自分たちを指して単にエンジニアと名乗るのは適切でないことになるのではなかろうか。

原義に近いところにいるのはたぶん建築技術者で、次が工兵だと思うが、元の語の意味をもとに話をするなら建築技術以外のエンジニアはみな単にエンジニアと名乗ることは適切でないことになるのではないか。

まあでも、エンジニアをシステムエンジニアと言い換えたところで、依然として「仕組みを作る人」でしかなく、なんの仕組みを作るねんという疑問があるんだけど、システムについてはコンピュータシステム以外のシステムのことは考慮する必要はないのだろうか。情報エンジニアとかも情報産業は何もいわゆるコンピュータサイエンスに限らないと思うのだが、それはいいのだろうか。

せいぜい 200 年そこらしか歴史がない内燃機関を扱う人だけがエンジニアというわけではないので、なんとかエンジニアのなんとかの部分を取った単なるエンジニアを、内燃機関を扱う人に限定するのはあんまり妥当ではないよなあということを思っている。


この話の本質はまぎらわしいからやめろということだというのはもちろん理解している。理解しているが、まぎらわしいからやめろという話を、言葉の用法の正しさにすりかえるのは適切ではなかろう、と思う。

ということが言いたかった。