ラノゲツクールMVを無料体験してみた感想

ラノゲツクールMVが週末限定で無料でお試しできるということだったので試した。

ざっくり使ってみた印象としては、UIが整理されていなくてあまり使いやすくはなかったものの、シーンのプレビューが即時にできるなどのアイデアは悪くないし、機能も充実している。使い勝手が改善されればというところだけど、現時点ではビジュアルノベルを作りたい人にはティラノビルダーを使うことをオススメする。

f:id:aoitaku:20180317174604p:plain

2ペイン、左上がシーン管理、左下がコマンドパレット、右上がシーンプレビュー、右下がシナリオエディターという感じになっている。

シーン管理は使ってみてないのでわからない。

コマンドパレットは、見てのとおりアイコンがたくさん並んでるんだけどただ並んでるだけという感じで、整理して配置されているティラノビルダーに比べて視認性が低い。
また、シーンとムービーのアイコンがどっちもムービーとも受け取れるような感じになっているし、ピクチャーと画面も似たようなアイコンになってしまっている。メッセージとテキストが分離しているのはやや戸惑うところがあるが、テキストは画面に文字を配置するためのコマンドなので、メッセージとは目的が違っている。違っているのだが、このあたりってひょっとしてピクチャとひっくるめて画面にオブジェクトを配置する命令としてまとめたほうがよかったんじゃないのか……?

並び順も妥当ではない気がする。
おそらく一番良く使うのはキャラクターとメッセージなのだが、これらを真っ先に配置したほうがよい。

個別のコマンドの並び順もいまいちわかりにくい。
たとえばキャラクターの中を見ると表示系が最下部にいる。シーンに登場させたり表情を変えたりすることのほうがよく使うのだから、これらを上に表示したほうがよい。
メッセージの表示に至ってはコマンド中央に埋没してしまっている。一番良く使うコマンドをこんなところに置くべきではない。

シーンプレビューは、実際に画面を見て確認しながら編集できて便利だと思うが、メッセージ入力中にリアルタイムにメッセージを拾ってくれるわけではないし、シナリオエディタで項目をクリック(すでに選択中の場合はダブルクリック)して再生し直す必要がある。
再生のたびに画面を表示し直していてとてもちらつく。画像系は変更がない限り再描画しなくていいんじゃないのか。このちらつきがかなり気になるので厳しさがある。

いちばんの曲者はシナリオエディター自体で、まずメッセージ入力に注力しづらい。ビジュアルノベルはとにかくメッセージを入力してキャラクターの表情をコロコロ変えて効果音や画面効果で演出をしてという感じのことをやるのがメインになると思うが、それらに集中しにくい。すべてのコマンドが複雑な入力フォームでパラメータを設定する感じになっている。パラメータ自体もとても多い。

パラメータは細かく設定できるに越したことはないが、毎回毎回細かく設定することはない。基本的には同じようなパラメータを使い回すことになるので、これらはプリセットを定義しておいて読み込むようになっているほうが使い勝手がよい。メンテナンス性も高い。後からパラメータを設定し直すのは地獄でしかない。
いちおう既定というコマンドがあってデフォルト値は設定できるのだが、複数のデフォルト値を交互に切り替えたりするのはできない。そのために変数とかを使うんだろうと思うのだが、変数を細かく設定するのは割と骨が折れる。

f:id:aoitaku:20180317181532p:plain

画像の座標をプレビューを見ながらドラッグで決定できるのはよいように思う。ただ同じパラメータはたぶんよく使うので、そうして決めた数値をプリセットにしたい。

背景色がコマンドの種類ごとに分かれているが、色わけはヘッダーだけで充分に思う。ヘッダーと詳細が分離したデザインになっていないのでむずかしいと思うが……そのあたりのティラノビルダーのUIを見るとよく出来ていることがわかる。

後発のGENEを引き合いに出すのもフェアではない気がするが、タイムラインエディターであるGENEのほうがグラフィカルエディタとしては一歩先にいる気がしてならない。ウェイト/続行の概念とかはコマンドリスト型だと把握しづらい。RPGツクールがそうなっているからRPGツクールでイベントコマンドを入力していると慣れるんだが、ビジュアルノベルは演出が並列して実行されることが多いので、どのコマンドが並列なのか見た目で把握できる作りになっている方が望ましく、その点でGENEのタイムラインエディターは理にかなっている。
とはいえ、GENEとRPGツクールMVでビジュアルノベルを作るのがいいかというと、一度作ったシーンをツクール上で編集してしまうとGENEで再編集しづらいことを考えると厳しさがある。今後ツクールのプリセットコマンドの対応が増えるとそのへんは改善するかもしれないが……。

ただ、ラノゲツクールMVはかなり多機能で、パスに沿って画像を動かしたり、UIパーツを画面に配置したりということが自由にできる。シミュレーションを作ったりするときには実際に画面を見ながら作れるのは大いに利点になると思うし、ちょっとしたシミュレーションを作るのにUnityを引っ張り出すよりはラノゲツクールのほうが小回りが利くだろう。

結論としては、ビジュアルノベルを作るなら現状ではティラノビルダーを使ったほうがよい。無料版には制限も多いが、PRO版はラノゲツクールよりずっと安い。ラノゲツクールはビジュアルノベルでなく恋愛シミュレーション向きなのかもしれない。