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スクエニ製の牧場物語風RPG、なんですが、本質はRPGなのでRPGだと思ってプレイすると事故が少ないと思います。
Switch 向けということもあってグラフィックは省コスト化されちゃってるけど、手触りもよかったし満足感は高かったです。
よかったところ
ストーリーはよくも悪くも王道なんだけど、魅力的なキャラクターがいる、それだけで好きなゲームになりました。お気に入りはメインヒロインのアリアなんだけど、敬虔な聖女ポジなのに脳筋なシュリカとか、キャラストがとてもよかったハイネとか、なんだかんだみんなそれぞれによさがありました。
SFの名作に対するオマージュがそこかしこに見られるので、SFファンはちょっとニヤっとできる場面があるかも。ハードSFを期待するとたぶん肩透かしなんだけど、味付けとしてはよかったです。
グラフィックは3Dは前述のとおりやや粗いですがクオリティが低いということはなく、普通にプレイしている分にはそこまで気にならないです。イベントシーンはちょっと表現力不足な感じはありますが、2Dのキャラクターイラストは美麗で、総じてそこまで悪くはなかったです。
サウンドは全体的にすばらしく、BGMは本当にこのゲームをよく表現していると思います。風の草原やヒガン渓谷はゲームの序盤ということもあって冒険心をくすぐるワクワクする曲調なんですが、そこから先、中盤以降になると、美しくて、厳かで、もの寂しくて、退廃的で、どこにいってもこの世界の終わりを感じさせないことがない。
SEもよかったです。SEはプレイヤーに適切なフィードバックを伝えるためにめちゃくちゃ重要で、鳴ってほしいところで鳴ってほしい音が鳴る、これだけのことが本当に気が効いている。
今作よくインディーゲームが引き合いに出されて「このゲームより値段がもっと安くて面白い牧場物語フォロワーいくらでもあるからそっちやったほうがいい」っていう意見を目にするんですが、今作くらいサウンドの品質が高いインディーゲームはなかなか遊べないと思います。なんだかんだスクエニはこういうところが本当によくできてる。
探索パートはどのステージも非常にレベルデザインがよく練られていると思います。ショートカットを開通させながら日数かけて挑むべきということが最初から提示されています。朝起きて夜寝るまでという一日のサイクルがあるので、プレイヤーは一日の時間経過という制約が課せられているわけですが、だからこそあちこちにショートカットがあるし、ゲームの最初に帰還アイテムを作らせているし、作った人がどう遊んでほしいのかちゃんと伝えてくれてる。どのステージのマップを見てもあきらかに「ショートカット開通させたから帰って寝て明日続き進めるか」みたいな感じで進行することを推奨していると思います。
まあ近年のゲームだと別にそこまで珍しいことではないと思いますが、それを丁寧にやっていることは素直に好感が持てます。
戦闘は位置と距離の概念があるシームレスなリアルタイムコマンドバトルという感じです。あくまでコマンドバトルであり、アクションRPGではないと思ったほうがよいでしょう。アクションRPGじゃないけど位置取りやタイミングにはそれなりに気を使う必要があるので、戦術性はあります。むしろコマンドバトルとは親和性がある。
レベルを上げればクリアしやすくなるあたりもちゃんとRPGになっている。わたしはここで何回かRPGはレベルを上げて物理で殴ってクリアできればよいという旨のことを言っているんだけど、RPGというのはキャラクターが強くなったことを実感できるべきであり、わかりやすい強さが与ダメの増加と被ダメの減少で、キャラクターが極まって強くなったならあっけなく倒せてよい、と思っています。今作はそういう意味ではしっかりレベル上げをすれば充分楽になるし、それでいて倒したときには充実感もある、というバランス調整になっていて、よくできていたと思います。
最後に今作の特色たる農業パート……なんですが、これはけっこう凡庸です。ふつうの牧場物語フォロワーで、特筆すべきことはない。ただ、今作の一要素としてみると、その存在にはそれなりに高い価値と意義があります。
敵を倒して得られるアイテムは基本的には料理やクラフトの材料で、換金アイテムはあんまりありません。あっても売値がやすいので、これでやっていくのは無理。つまり作物を育てて売るのがもっとも効率のよい金策になります。が、武器強化以外にRPGパートに必要な金策はないので、むしろ重要なのは作物を育てて料理をするということ。野菜や果物はインスタント回復アイテムであるジュースになるし、スタミナを回復できる料理にもなる。料理は腹がふくれるので連続して何度も使えないのでジュースはジュースで必要だけど、ジュースは農場に果樹を植えれば繰り返し果実を入手できるので結構簡単に確保できる。料理は季節の野菜を育てていれば充分作れるようになっている。
で、探索と戦闘をしっかり行うとけっこうすぐガス欠になる。スタミナ管理が重要なのでちゃんと飯食えよというのがわかる(チュートリアルの早い段階でサンドイッチが渡されることからも食事の重要性がよくわかる)。飯のために農業させる作りになっている。食事のバフは強力で、これがあるとかなり楽になる。というかないと難しくなるので、食事はしたほうがよい。食事に必要なアイテムは、前述のとおり、普通に探索と農業をやっていれば充分、余裕があるだけ手に入る。
一方で、農業はそこまで真面目にやんなくても困らない、前述の通りインスタント回復アイテムは果樹を植えれば恒久的に繰り返し手に入るし、採取アイテムだけで作れる料理でもスタミナ回復手段になる、金策はそこまでがんばらなくてもよい、レベルを上げれば攻略が楽になる……ということもあって、割と自由に遊べるようにもなっています。
というわけで提示されたとおりの遊び方をするかぎりは快適に遊べるし、提示されたとおりの遊び方をしなくてもクリアできるようになっている。ストーリーはちゃんと面白いので、ゲームとしては総じてよくできているなあという感じでした。
よくなかったところ
メインシナリオもサブシナリオもカットシーンが多すぎる。戦闘はシームレスなのに、サブシナリオはインゲームの会話でシームレスに進行しないの何。この関係でかなりテンポが悪かったです。まあリアルタイム3Dのゲームだとキャラクターの位置だったりなんだりをちゃんと同期とって動かすにはカットシーンに切り替えてしまうほうが楽で安全に実装できるという事情があるのはよくわかるし、近年のRPGはだいたいこうなっているので今作が特別わるいというわけでもないんですが、まあなんとか解決してほしいですねという気持ちはあります。
あと、ゲームの遊び方の提示はそれなりにちゃんとやってくれているとは思うんだけど、全体的に説明はちょっと不親切。「死季に果樹は枯れない」とかちょっとわかりにくかったと思います。どの敵がどこに出るかとか、どのアイテムがどこで手に入るかとかも、ゲーム内の図鑑でカバーできるようになっていてほしい。「攻略サイト見ればいい」の時代は平成で終わっていて、今はゲーム内で攻略情報が完結するくらいでちょうどよいと思っています。
キャラクターとのかかわりがキャラスト後ぱったりなくなってしまうのもさみしいですね。せっかくキャラクターと仲良くなったのに、仲良くなってからできることがない。会話はバリエーションに乏しいし。プレゼントあげたりデートしたりしたかった。そういうゲームじゃないって言われるとそうなんだけど、じゃあキャラの好感度とか同居とかなんやねんっていう感じにもなる。同居も「いってらっしゃい」と「おかえり」があるだけなのでかなり薄味で、もうちょいなんかあってほしかった。
値段はこのグラフィックだとちょっと高いかもしれないです。ゲームも別に新鮮さはないです。突き抜けたよさもない。ただ全体的によくまとまっているし、キャラクターが魅力的だしストーリーも王道でよい。わたしはセールで買ったんですが、セールで買うぶんには充分ありだと思います。
まあでもそれくらいしか不満はなくて、最後まで楽しめたので全体的にはかなり満足しています。いいゲームだったと思うし、好きなゲームだなという感じ。しかし誰に勧めたらいいんだろうな。牧場要素が好きな人向けだけど、農作業に疲れてRPGやりたい人……? そんな人おる……?
まとめ
というわけで牧場物語のカワを被ったRPGでした。
こちらからは以上です。