なろう読書強化週間

週間ではないんだけどなろうの大長編をいくつか読んだりした。

【一行で分かるあらすじ】
才能はあるけどコミュ障なポンコツ魔女が、正体を隠して王子様の護衛をする話。

【まじめなあらすじ】
天才魔術師モニカ・エヴァレットは人見知りで、人前で喋るのが大の苦手。
そこで彼女は猛努力の末に、詠唱をせずとも使える無詠唱魔術を習得。〈沈黙の魔女〉として、弱冠十五歳で七賢人に選ばれた後は、森の中で静かに暮らしていた。

それから二年が経ったある日、モニカに一つの命令が下される。
その命令とは、学園に通う第二王子を、本人には気づかれぬよう秘密裏に護衛してほしい、というもの。
かくしてモニカは王子の護衛をするために、貴族の子女が通う煌びやかな学園へ潜入するのだった。

「いやだよぅ、怖いよぅ……うっ、うっ……胃がキリキリするぅ……」

と泣きべそをかきつつ。

完結済み。約100万字。
あらすじでピンと来た人は是非読んでほしい。コミカルとシリアスのメリハリがよく、テンポよく話が進む。読後の満足感に対して総文字数が100万字切ってるのでコストパフォーマンスがいい。キャラが魅力的、七賢人は主人公のモニカをはじめ、変じ……一癖も二癖もある個性派揃い。
とにかくモニカが可愛くてかっこいいし可愛い。
人と接することに不慣れな主人公が成長する話であり、主人公が登場人物たちが抱える問題を解決し、心を解きほぐしていく話であり、王子の護衛にあたって降りかかる事件を通じて真相に迫っていく謎解きものであり……という王道の話なのでおおよそいろんな人におすすめできる。これが100万字切ってるんですよ。

世に100の神ゲーあれば、世に1000のクソゲーが存在する。
バグ、エラー、テクスチャ崩壊、矛盾シナリオ………大衆に忌避と後悔を刻み込むゲームというカテゴリにおける影。
そんなクソゲーをこよなく愛する少年が、ちょっとしたきっかけから大衆が認めた神ゲーに挑む。
それによって少年を中心にゲームも、リアルも変化し始める。だが少年は今日も神ゲーのスペックに恐れおののく。
「凄い! 慣性と重力が常識的だ!!!」

連載中。この記事の時点で約250万字。
主人公がクソゲーハンターというだけあって作中には相当数のクソゲーが登場するしそれがストーリーにも結構影響するんだけど、クソゲーに関する描写はなかなかにフェアで「こういうクソゲーあるよね」というクソゲーあるあるを愛をもって描写している。クソゲーを「クソ」と唾棄しない品のよさが芯にある。この点でかなり個人的に好印象。VRMMOものなんだけど閉じ込められでもゲーム風世界に転移でもなくて、あくまでゲームの話なんだけど、それってつまりわざわざゲーム風異世界を攻略する話にしなくても、ふつうにゲームを攻略する話でいいじゃんというか、それゆえに地に足がついていた感じがしてよかった。

ライブダンジョンという古いMMORPG。サービスが終了する前に五台のノートPCを駆使してクリアした京谷努は異世界へ誘われる。そして異世界でのダンジョン攻略をライブ中継で見た努は絶句した。戦略のせの字も無いゴリ押し。不遇のヒーラー職。ゲームでは白魔道士を愛用していた努は白魔道士復権と、異世界脱出の鍵を求めダンジョン制覇を目指す。

なろうでは完結済み。なろうの掲載分までで約190万字。作者サイトで後日談を連載中。
上で「ゲームを攻略する話、別に転移しなくてもいい説」みたいなこと書きつつも、転移する話はそれはそれでいいというか、転移・閉じ込められは「攻略」に徹することができないところがいいところではあるので、純粋に攻略の話をやるんじゃなくて、異世界で異物として生きていく話を書くならやっぱり転移のほうがいいんだろうなという。読み味としてはゲーム攻略もので、どうやってボスを倒すのかというところの描写は読み応え充分。
なろう連載分は攻略部分は一段落しているのでここで完結といっていいといえばいいんだけど、異世界で生きていくことを決意するのは後日談からの話なので後日談まで含めてはじめて完全、という感じがするので、完結してるなら読んでみようかなという人は留意が必要。

現代世界をモチーフにした乙女ゲームの悪役令嬢に転生。けど、現代世界だからこそ悪役令嬢のスローライフにはいろいろと苦労があって、NAISEIするにも日本近代史と現代経済史とグローバル経済が主人公に襲いかかる。 頑張れ悪役令嬢!負けるな悪役令嬢!!ちょっと太平洋戦争に負けたり、バブルが崩壊したり、フィナンシャルクライシスが襲いかかるけど、ちゃんとスローライフを送るために主人公とイケメンを放置して歴史改ざんとマネーウォーズに身を投じる悪役令嬢桂華院瑠奈の奮闘記。

連載中。この記事の時点で約100万字。
乙女ゲーム転生の皮を被った架空戦記。90年代から2008年のリーマンショックに至るまでの一連の「金融戦争」を題材にした話なので戦記でいいし、現代に貴族がいて樺太が日本領になっててという並行世界物なので架空戦記ですね間違いない。そのあたりの設定はよく作り込まれていて架空戦記が好きな人は読んでほしいけど悪役令嬢ものだと思って読むと思てたんと違うってなると思う。プロローグ以降ヒロインまだ登場してすらいないし。
それはそれとして平成の金融史を追体験するドラマとしてよく出来ていて、山一証券が、北海道拓殖銀行が、ハドソンが救われる世界がそこにはあります(ハドソンはついでに救われただけっぽいが)。

連載中。この記事の時点で約140万字。
悪役令嬢が処刑されて数年前に転生して……というやり直しもの。ポンコツな姫を周囲の有能な人材が妄想で忖度してあれよこれよという間に事件が解決していく……という最近だとちょっとめずらしいスタイルの話。
ともすればご都合主義的とみなされかねないわけだけど、コメディならアンジャッシュよろしくディスコミュニケーションが物語を転がすのは真っ当に成立するんだよな。本作はコメディでありながら政治劇としてもしっかり成立しているし、なんなら姫はポンコツでも民のための政治を(断頭台回避したいという自分ファーストが動機ではあるものの)目指していて為政者の資格があるし、ポンコツだからこそ憎めない魅力があるとも言える。
何より、何がどう転がって事件が解決してしまうのか、というところの巧みさがご都合主義っぽさを払拭してるよね、というところで、主人公を有能にして解決するのとは逆のアプローチでもちゃんと書ける人は書けるんだよなと思いました(感想文)。


数えたらトータルで800万字弱読んでて引く。これ以外に10万字くらいの作品を何本か読んでるので800万字以上は読んでるんだけどなろうだと文字数読んだ感を実感しないままにずるずる読み続けてめちゃくちゃ時間経ってたみたいなことままあり、ユーザーを滞在させる仕組みがあるプラットフォームなー!となりました。なろうって試し読みから有料版に誘導するの規約で禁止してて違反するとアカウントBANするまであるんですけど本当にそういうの不健全だと思うのでちゃんと作者に還元するか作者がやっていけるような体制を整えてほしいですね。頼むぞ。