グノーシアがSwitchに移植されてることを知ったのでプレイした話

グノーシアというのはPSVitaで発売されたゲームで、簡単に言うと1人プレイ用のSF人狼ゲームである。SF人狼というと昨今話題なのはAmong Usがあるが、このグノーシアは一人用のゲーム。プレイヤーは宇宙船の乗員。自分以外は全員NPCで、それぞれの発言から状況を整理して、誰が人狼――このゲームではグノーシアと呼ぶので、以降グノーシアと書く――なのかを突き止め、投票で処刑(このゲームではコールドスリープ送りにすることなので、以下コールドスリープ送り、あるいは吊ると書く)する、という流れになっている。
誰がグノーシアで誰が人間なのかはプレイするたびに変化し、エンジニア(人狼でいう占い師)やドクター(人狼でいう霊媒師)、守護天使人狼でいう狩人/騎士)、AC主義者(人狼でいう狂人/多重人格)の配置も変わる。
グノーシアをすべてコールドスリープ送りにすれば人間の勝利、人間がグノーシアと同数以下になればグノーシアの勝利で、勝っても負けても1ゲームが終わると次の周回に入り、配役がランダムにリセットされる。
ゲームを進めていくことで経験値を得て能力を獲得したり、キャラクターとの親交が深まって能力が上昇したり、という成長要素があり、本来は対人でプレイする人狼というゲームを一人用のデジタルゲームにうまく落とし込みながら、ループSFという設定にも絡めている。
キャラクターは個性的で、たとえばあるキャラクターは直感に優れ、嘘をついている人間がいると気付きやすかったり、あるいは演技力に優れ、嘘に気付かれにくかったりという能力値の設定がある。プレイヤーも能力値を成長させることができるので、他人の嘘に気付きやすくなったり、あるいはグノーシアサイドになったときに役職騙りや濡れ衣を着せるための嘘をバレにくくしたりということができる。

Switch版は今年の4月に出てたらしくパッケージ版の発売でSwitch版の存在を知ったんだけど、まあ気になっていたのでこの機会にやろうということでDL版を買って今遊んでいる。

とても巧みなのは、人狼ゲームが苦手でも能力を上昇させればゲームを有利に進行させられるようになる一方で、特定の能力だけでは人間サイド、グノーシアサイドの両方で勝ちやすいというふうにはできないようになっている。グノーシア側は直感はあまり重要ではない(自身がAC主義者ならグノーシアに気付きやすいし、グノーシアの場合にもAC主義者の発見に役立つという面はある)一方で、人間側は演技力はあまり役に立たなかったりする。いずれの場合でもカリスマやロジック、可愛げは有用だが、いずれかだけでやっていくのは難しい。

人狼ゲームのセオリーがそのまま活かしやすいところはあり、たとえばエンジニアが3人カミングアウトしているなら3人の中に1人以上のグノーシアがいることが確定する(素の乗員は役職騙りできないので。人狼ゲームでは村スライドというテクニックがあったりするが、グノーシアにはない。ないほうがシンプルだしわかりやすいと思う)。なのでエンジニアを全員コールドスリープ送りにすれば確定で一人はグノーシアを吊れるというわけだ。人狼ゲームではこれを占いローラーと呼んでいるが、この戦術はグノーシアでも使える。
縄数管理という概念も重要で、ローラー戦術を取るときには特に意識する必要がある。エンジニアが2人カミングアウトして、1人が真エンジニアでもう1人がAC主義者なら、残りのグノーシアはすべて潜伏していることになる。この状態でローラーをやっていると日数が足りなくなる恐れがある。このときのコールドスリープ送りにできる人数のことを人狼ゲームでは縄数と呼ぶ。処刑に必要な吊り縄の数、というわけだ。
人間を吊ってしまうと1日に2人ずつ人間が死んでいく計算なので、たとえば9人でグノーシアが2人なら人間は7人、人間を3人吊ってしまうと残り1人しか人間がいないので負けが確定するし、2人でも残り3人なので一人も間違えられなくなる。エンジニアが2人カミングアウトしている状態でローラーをやったらもうミスが許されない局面になっている。盤面にも寄るが、このあたりを考えてやっていく必要がある。

議論のログ、投票のログがそれぞれ見られるので、誰が誰に投票していたのか、誰が誰を疑っていたのかというのは重要なヒントになる。NPCポンコツなので一貫性のない動きをして思考が読めないこともあるし、盤面上グノーシアが確定している場面で人間に誤投票したりもするから、自分が間違えないことが大事、かつ、NPCに間違えさせないように票を誘導することも重要になる。

対人の人狼ゲームと比べると、会話であぶり出したりということが難しいが、その分、盤面整理ゲームとしての純度が高まっている。グノーシアサイドでできることは役職を殺して人間に情報を落とさせないことで、これが立ち回り以上に重要な気がする。

まだ12周くらいしかしてないんだけど、1周が15分程度でサクサク遊べ、推理ゲームとして面白く、成長要素があるので周回自体にも楽しみがあり、キャラクターとの親交を深めてキャラクターのバックグラウンドストーリーが明かされていく中で、このゲームのストーリーの真相に迫っていく……という、コンパクトだしゲームパートもいい意味でシンプルなのに、楽しい要素は盛りだくさんでかなり満足感がある。これが2750円なのはかなりコスパがいい。

それぞれのキャラクターに人間サイド、グノーシアサイドの顔があるのでどちらも楽しめるのがいい。冠を持つ神の手がそういう楽しみが出来るゲームだったんだけど、あれが好きな人には刺さるんじゃないかと思う。

あとこれが一番重要なんだけど、人狼気になってるけど対人の人狼は怖いな~とか思ってる人にとっては、人狼の思考ゲーム部分をしっかりと楽しめるゲームになっているから、ぜひやってほしい。対人だと議論でギスギスしたりとかが結構あって(敵対するんだからこれはしょうがない)、そのへんをゲームだからと割り切って楽しめる人は対人の人狼やるのに抵抗ないと思うし、あと対人の人狼がメタゲームを排除しきれないところも、NPC相手だから気にしなくていいというか、まあキャラクター読み要素はあるけど、「あのプレイヤーは頭よくて人狼だったとき勝てないから吊っとこう」とか「あのプレイヤーは思考が伸びにくくて役に立ちにくいから初日に吊っとこう」みたいなことは起きない。逆に人狼サイドの驚異噛みみたいなのは全然ありだと思うけど、それはそれで驚異噛みされそうだから騎士が護衛に入りやすいとかもあるからね。
初日噛みとか初日吊りでその後ゲームに参加できないのはある種しょうがない部分もあるけど、それが特定のプレイヤーに寄りやすい、ってなるとそのプレイヤーが人狼を楽しむのってどうすんの?みたいなのは、人間同士のゲームだからどうしても起こりえてしまい、そのへんをケアしたのが例えばワンナイト人狼みたいに夜が1回しかないゲームだったり、Among Usみたいに死後は幽霊になってタスクを消化できるのでやることがなくならない、というゲームだったり、一応工夫のしがいがある。
ともかく、グノーシアは対人ではないのでそういう懸念がまったくない世界になっている。たとえばプレイヤーが毎回初日にコールドスリープ送りにされたり初日に噛まれたり、っていうことは、ゲームシステム的に回避できるようになっている。グノーシア側からの脅威度を下げるステルスや、投票されにくくなる可愛げといった能力を上げることで初日の生存確率を高めることができる。
このへんはデジタルゲームの強みだなあと思うし、デジタルゲームなのに理不尽に初日に排除されすぎるともはやゲームなのか?という感じでもある。

ごく個人的なんだけど実は対人の人狼はそこまでやりたいとは思ってなくて、でも見るのはめちゃくちゃ好きで、最大トーナメントとかアルティメット人狼とかはよく見てる。そういう人でもグノーシアは人狼の楽しさを存分に味わえるいいゲームだなと感じている。

グノーシアやって面白かったっていう人は最大トーナメントとかアルティメット人狼みたいな人狼の配信も見てみると面白いと思う。上手い人の人狼は本当にめちゃくちゃ面白いし、人に見られることを意識したエンターテイメントとしての人狼ゲームでのプレイヤーの振る舞いみたいなのもあって、普通に見世物としてもおすすめできる。

こちらからは以上です。