無敗馬

サラブレッドにおける無敗馬、現代の競争においては非常に達成が困難で、というのも、かつてはたとえば調教設備の格差であったりなどの様々な理由からレベル差が大きかった関係で、抜きん出て速い馬というのが存在しやすかったが、現代はそうではなく、全体のレベルが向上してそれほどまでに他を圧倒する存在というのが成立しにくくなっている。

90年代以降の日本の中央競馬における無敗馬は、たとえばアグネスタキオンフジキセキがいる。いずれも4戦4勝、GIも勝っているが、要は負ける前に引退した、ということであって、常勝無敗だった、というわけではない。現役が長かったらどこかで古馬と対決して負けていただろう。

古馬と戦う前に引退したが、古馬と戦っても勝っただろうという馬にマルゼンスキーがいる。8戦して8勝、生涯最後のレースになった札幌の短距離ステークスでは2着に10馬身差をつけての圧勝で、この馬が同世代の中で抜きん出ていたことがわかる。マルゼンスキー外国産馬だったので内国産馬限定のレースには出られず、クラシック競争も天皇賞も走れなかった。2000m以上は走っていないが、皐月賞秋の天皇賞は勝てたんじゃないかと思う。

海外に目を向けると、まず外せないのがフランケルだろう。日本でも産駒が走っているし、GI馬も多数輩出しているが、何より自身の成績がすさまじい。14戦14勝、うちGIを10勝している。距離適性の関係か、ダービーやKGVI&QS、凱旋門賞は走っていないが、英国内のマイルGIを総なめ。新馬戦では後にKGVI&QSを勝ったナサニエルを下しているし、引退レースでは当時最強の古馬の一頭であったシリュスデゼーグルを下している。これだけの相手に勝って無敗なのだから真に無敗の名馬といっていい。

このフランケルに勝るとも劣らない圧倒的な馬がもう一頭いて、それがオーストラリアのブラックキャビアである。

歴史上最強のスプリンター、ブラックキャビア。その戦績はなんと25戦25勝、うちGIを15勝。21世紀の馬ですよこれ。ブラックキャビアの偉業をたたえ、現役中に自身の名を冠するようにレース名が変更されたりしている(しかも勝って三連覇を達成)。英アスコットのダイヤモンドジュビリーステークスではフランスでGIを6勝した強豪スプリンター、ムーンライトクラウドを下しており、オーストラリア国内でだけ強い馬というわけではなかった。

古馬になってからも他馬を圧倒するほど強い馬が、レベルの上がった現代においても存在しており、それらの馬がどれほど強いのか、推して知るべしという感じ。

それはそれとして、古馬と対戦するまで一度も負けていないコントレイルやデアリングタクト、無敗ではなくなってしまったがそれがすごくないのかというとめちゃくちゃすごい。ディープインパクトにしたって有馬記念ハーツクライの2着に敗れているし、それくらい古馬と戦って勝つのは難しい。ヨーロッパだと3歳馬が凱旋門賞を勝つのはあまり珍しくないんだけど、そういう3歳馬が凱旋門賞を勝った後、古馬になってからも強かったかというと必ずしもそうではない。
現代は全体的にレベルが上がっているので、勝ったり負けたりするのが普通で、そんな中で連対率100%とか複勝率100%とかいう馬がいたらそれは充分に歴史的な名馬である。そうでなくとも、オルフェーヴルゴールドシップみたいにムラっ気があって勝ったり負けたりしながら大レースでたくさん勝っている馬もいる。アーモンドアイだって有馬記念では凡走している。古馬になってから覚醒したモーリスのような馬もいるし。

今年は昨年みたいに無敗三冠馬が誕生するような年にはならなさそうな気はしていて、たとえばソダシは強いけどオークス勝ちきれるかどうかはまだ未知数だよね、とか、ダノンザキッドはダノックス史上最大の大物だと思うけど、じゃあ菊花賞戦えるのかっていうとわからないし、という感じ。グレナディアガーズみたいにすでに無敗ではないけど将来有望なマイラーもおり、どの馬が抜きん出ている、という感じではなさそう。その分、拮抗した勝負が見られそうだなとも思っていて、それはそれで楽しみではある。
ちなみにグレナディアガーズはフランケル産駒で、フランケルマイラーだったのでおそらくグレナディアガーズもマイラーだろう、と想像しているんだけど、ソウルスターリングオークス(2400m)を勝っているし、フランケル産駒の中には英セントレジャー(3000m!)を勝ったロジシャン、仏カドラン賞(4000m!!)を勝ったコールザウィンドがおり、必ずしも産駒もマイラーとは言えない。まあ母父がアンブライドルドの子ハーリントンだし、長距離適性のある血統には見えないのでマイラーなんじゃないかとは思う。

というあたりを踏まえてウマ娘2期の6話を迎えたいと思っています。こちらからは以上です。