TVAぼっち・ざ・ろっく!6話までの雑感

ネタバレもあるから続きから。原作ネタバレもあるから原作も読んだほうがいいぞ!

話とか構成とか

シリーズ構成は原作からけっこう手を入れている。手を入れているといってもあくまで原作のエピソードベースで、そこからはあまり逸脱していない。原作に忠実に原作を再構成しているというのか。たとえば6話で学校のぼっちってどんな感じなの?って喜多ちゃんに聞いてるシーンとかはもうちょっと後の話で出てくるんだけど、このタイミングで差し込んだからアニメーション向きの構成になったと思う。
明確に話が変わってるのは、4話のアー写のシーンかな。確か作曲が先で作詞が後だったと思うけど、歌詞から曲を起こしたという流れになっている。なっているが、アー写のシーンでまとめてリョウに歌詞見せるところまでやったからそっちのほうが流れがスムーズにアニメーションになるんよね。その上でちゃんとストーリー上の意味の強度を高めているのでいい構成だと思う。

あとこれは脚本というか監督とか演出の仕事だと思うけど、原作は4コマなので要素を強めにデフォルメして詳細は省略してテンポよく描かれているが、そういう省略されたであろう要素が復元されてる、ように見える。それくらい自然に再構成されているので原作との違いが違和感にならない。

絵づくりとか

「作画」という話はしない。アニメーションは動画だからまず絵コンテから大事。演出も大事。本作、キャラデザは原作に寄せたゆるめの感じなんだけどとにかくめちゃくちゃよく動く、キャプ画見るより実際に動いてるところを見たほうがいい、かなり印象変わる。OPだけでも見て。特に演奏シーンは音ハメが徹底してる。とにかく丁寧。全編通して言えるけど、力を抜くところは抜いて、見せの場面では細かい演技まで描くということをやっている。
ED のデフォルメキャラのアニメーションもまたいい。これ見た目はゆるいけどやってることはけっこうエグい、曲とのタイミング合わせとかがむしろ妥協できなくなってる、当然妥協してる部分はないので見ててとにかく気持ちいい、とにかく気持ちいいアニメーションが毎週見られるから ED 飛ばしたことない。

曲とか

OP曲「青春コンプレックス」の編曲の三井律郎は la la larks のギターで元 School Food Punishment のサポートメンバー。「青春コンプレックス」の実演奏のギターも氏が担当。実演奏のドラムス担当は比田井修で、元 School Food Punishment のドラムス。LiSA や緑黄色社会などでサポートメンバーとしてドラムスを担当したりしているらしい*1。こんなところで School Food Punishment つながりがあるのを見ると思ってなかったからちょっとびっくりしつつちょっとうれしい。SFP つながりではあるものの編曲が江口亮でないので音作りは SFP とはだいぶ違うというか、これが三井律郎の編曲なんだろうかと言われるとそれは自分にはちょっとわからない、三井律郎がギターを務める LOST IN TIME は残響系ってよりは Bump とか RAD とかそっちのほうが雰囲気が似てる。だからたぶんこれが “結束バンド” の “音” ってことなんだと思う。そういう意味だと「Distortion!!」もいかにも KANA-BOON ってメロディーラインだけど曲全体の雰囲気はちゃんと結束バンドだし、編曲の仕事が丁寧だと思った。

SFP つながりというにはちょっとややこしいんだけど「青春コンプレックス」と「ひとりぼっち東京」の作詞を担当した樋口愛のヒグチアイ最強スリーピースのベースが元 SFP の山崎英明。ちなみに同ドラムスの畑利樹東京事変のドラムスで、2nd ED カラカラの作詞作曲を担当した中嶋イッキュウのバンド tricot のサポートメンバーでもある。樋口愛は「あのバンド」の作曲を担当した草野華余子の『Life is like a rolling stone』に参加している。なんだかよくわからないがそういう人のつながりがあって「ぼっち・ざ・ろっく!」の楽曲が出来上がっているんだなあと思った。

あとリョウ先輩が「バラバラな人間の個性が集まってそれがひとつの音楽になる」って言ってるけど、複数のアーティストが楽曲提供してそれが編曲の手でひとつのバンドの曲に仕上がってるからちゃんと説得力があるんよね。「Distortion!!」の歌詞はぼっちらしいかというとちょっとわからないというか KANA-BOON というか鮪じゃんという感じなんだけど、ぼっちの部屋には HAKO-BOON のポスター貼ってあったし多少影響受けてるやろ、でも喜多ちゃんが歌うと不思議とああ結束バンドだってしっくり来るんだよな、とかなんとか。

喜多ちゃんが歌うと、の話。これはちょっと先の展開にも関係するんだけど*2、ぼっちの歌詞を喜多ちゃんが歌うことの意味って実は大きくて、それを踏まえての「ギターと孤独と蒼い惑星」の歌詞がめっちゃいいんすよ、青春コンプレックスの歌詞みて見てほしい。歌詞は歌詞掲載サイトがあるのでそこを見てほしい。見たな? これは自分の無力さを呪いながら必死に歌うという歌で、ぼっちがぼっちの思うままに書いた歌でありながら喜多ちゃんにめっちゃ深く刺さる歌詞になっている。喜多ちゃんは後にぼっちに「自分は平凡」ということを漏らしていて、なんでもそれなりにこなせるがそれなりどまりだからこそリョウやぼっちのような天才が眩しすぎたりする。ぼっちが自分のダサい影が色濃くなってしまうと呪うのは、実は喜多ちゃんがいちばんそれ思ってるかもしれない。ぼっちは喜多ちゃんに「そんな自分を変えたいっていう部分ではわたしたち共通してるよね」つって喜多ちゃんがぼっちの書いた歌詞を正しく自分の歌にできるようになる、っていうのがこの後の話なので、あらためて、それを踏まえて「ギターと孤独と蒼い惑星の歌詞」がめちゃくちゃよくないですか? 全人類原作も読もうな、いうてぼくもアニメから入った人間なので大きい顔はできないんだけど。

めちゃどうでもいいけど「ひとりぼっち東京」で喜多ちゃんが「いくよ!」って歌ってるのちょっとフフってなっちゃった。郁代がいくよ!ってね、フフ……。

小ネタの仕込みとか

各話タイトル、飛べない魚の前に気付いた人はえらい。馳せサンズは割とわかりやすかったと思うけど、転がるぼっち、また明日だけだとわかんないよ!
君の街まで MV のパロディはつい笑っちゃった。でも本家の MV はもっと意味わかんないんだよな、そういう曲じゃないし。6話でぼっちがクビになるかも~って妄想してる場面、カラフルな床に黄色シャツ白スカートのチアガールは新宝島の MV のパロディなんだけど、なんで唐突に新宝島かというと原作のこの次のエピソードの扉絵が新宝島のパロディなんだよね。原作読んでるとニッコリしちゃう。

とにかく原作読んでると更に味わいが深くなるというか、原作だけ読めばいいとかアニメだけ見ればいいじゃなくて両方楽しめる、原作先に読んでアニメ見ても面白いしアニメ見て原作読んでも発見がある、メディアの違いと強みを理解ってる!

そんなアニメなのでみんなも見よう。

*1:アニメ作中でもちょいちょい緑黄色野菜ってバンド名が出てきてる

*2:3巻の話なのでアニメではたぶんそこまでやんないが