ぼっち・ざ・ろっく!劇場総集編感想

総集編なのでネタバレらしいネタバレも特にないですが、総集編ならではのポイントはあるし、書くんだけど、そこは劇場で見てくれよなという気持ちなのでまだ観てない人は観に行ってほしい。前編はもう上映終わってるかも。

前編 Re:

1話から8話までを100分足らずに圧縮する関係で結構いろんなところが端折られてます。

それを踏まえてなんですが、Re:のアバンはTVA5話「飛べない魚」の虹夏がぼっちに自販機でジュースを奢るシーンからはじまります。バンドをやっている理由のくだりですね。で、Re:はTVA8話までの内容なので、ライブ後の打ち上げで店の外での虹夏とぼっちの会話シーンで締める、という構成になっている。「なぜバンドをやるのか」ではじまり、結束バンドのメンバーみんなの目指すところが示される。

その構成に必要なシーンから特においしいところをピックアップし、ダイジェストで早回しにするところではTVA未使用曲を流す。このダイジェストがいわばTVA未使用曲のMVになっていて最高。『ひとりぼっち東京』とか『小さな海』のMVみんな見たいやろ? 見ましょう。

TVAにはあったけど劇場版にはない、みたいなのは細かいセリフ含めて結構あるんだけど、まあ総集編だしそこはTVA見て補完すればいいと思う。総集編だけ見て話がわからないということは全然なく、なぜバンドをやるのかというテーマを描くというところでは一貫しているので軸がブレていない。

演奏シーンの音はあらためて録り直してると思うんですけど、すごく細かい音まで入ってて臨場感がやばかった。わたしはシネマシティの極音上映で観たので特に。ライブの音のイデアを味わわせてもらいました。シネマシティの音響で比田井さんのもたもた再現ドラムを聴くの贅沢すぎる。あれあらためて聴いてもわけわからんよね。なんで狙ってあんなもたついたドラムにできるんだ。

オープニングの『月並に輝け』は新規カットたくさんあったと思います。なんか知らん映像見せられて脳がおかしくなった。

後編 Re:Re:

後編はTVA8話のライブの三曲目をオープニングで流すとかいうにくい演出になっています。このオープニング映像もなんか知らん映像たくさんあったので新規カットたくさんあったんだと思う。

後編は前編と違って4話分なのでもともと100分くらいしかない。その上でダイジェストも使う。後編のクライマックスは『星座になれたら』のライブシーンで、その後は保健室のぼっちと喜多ちゃんの会話で締めていいくらい。でもその後も結束バンドは続いていく、というところを、TVA版ではあたらしいギターを買いに行って翌朝のぼっちの通学シーンを流して『転がる岩、君に朝が降る』のカバーで締める演出で描いていました。劇場版は尺のバランスを考えるとTVA12話のBパートまるっと描くとテンポが悪いので、あたらしいギターを買いに行くシーンは曲流してダイジェストになっています。劇場版としてはこの構成でよかったと思いますね。山田のクソムーブ(試奏で本気出してドヤるやつ)が見たいひとはTVA版を見ましょう。

さて、劇場版は「Re: / Re:Re:」です。Re:っていうのは電子メールの返信時にタイトルに付与されるやつで「~について」くらいの意味のラテン語が由来です。「掲題の件について」くらいの意味合い。タイトルが空白のメールに対する返信だと「Re:」だけになるし、そのメールに更に返信すると「Re:Re:」になる。

「漠然とバンドやりたい」=空白ではじまって、「目指す道は見えた」という回答が「Re:」で示される。その「Re:」に対する回答が「Re:Re:」ということなんだと思います。なので、「Re:Re:」の締めの演出がああなっている。エンディングテーマはもちろん『Re:Re:』です。もう公開情報なので書いていいよな。Spotifyでも聴ける。知らん状態で映画館で聴くのがいちばんだとは思うんだけど、まあ流石にそうだと思って観てはいたので、期待通りに来てほしい曲が来てうれしい、という感じ。

喜多ちゃん視点のカットが増えてたと思います。原作はこの後の話とかで喜多ちゃんが何を考えているのかどういう気持ちなのかを描くシーンがばすばす入ってくるんですけど、それを踏まえてかTVA時点でもかなり補強されてました。『星座になれたら』とかいう楽曲がまずその前提がないと出てこない曲というか、ぼっちが喜多ちゃんをまぶしく思うのと同じかそれ以上に喜多ちゃんはぼっちをまぶしく思ってる、だから喜多ちゃんが歌うからこそ刺さる、という構造になっている。そういやこれも回答に対する回答の構造だな?

劇場版では更にここを強化してきています。セリフは変わってないと思うけど間の取り方がぜんぜん違う。溜めが効いていて大事なセリフが強調されてるんですよね。セリフないところでも喜多ちゃんがぼっちをじっと見つめてたりとか、ちょいちょい矢印が増えてる。喜多ちゃんが山田にギター教えてもらうカットとかたぶん新規? ぼっちが喜多ちゃんの変化に気付くシーンもちょっと強調されてる。どうしてこういうことするの泣いちゃうよ。

「Re:」がぼっちが成長して結束バンドになるまでの話を経て、実は喜多ちゃんはまだ漠然としている。虹夏いわく「みんなで何かをすることに憧れてる」なんだけど、まだ「憧れ」なんですよ。憧れに追いついてぼっちの隣に立てるようになりたい喜多ちゃんを描くことに、それ以外のシーンをダイジェスト化して浮いた部分をあてて強化している。

TVAはぼっちの成長を「転がるぼっち」から「君に朝が降る」で描き、劇場総集編は「Re:」をぼっちの回答として、「Re:Re:」を喜多ちゃんの回答として描いてる。

そういうわけで「Re:Re」はTVA版とは別視点で解釈した作品になっています。

視聴済み勢にこそ見てほしい。未視聴勢は両方見て両方の味の違いを比べてみてほしい。

こちらからは以上です。