ドラクエ3リメイクのグラフィックの話

HD2Dっていうかもう3D+2Dじゃん?みたいな感じにはなっているが、実際にドラクエ3のマップをたとえばマイクラで再現してみたりするとHD2Dのプレイフィールにするのがしんどいんじゃないかなという気がする。

ドラクエ7ドラクエ9

ドラクエ7は3Dマップで2Dのキャラを動かす、ドラクエ9はドット絵風3Dのゲームで、どちらも今のHD2Dにかなり近い感じがある。なんだけど、いずれも視点を回転させられるようになっていて、物陰に隠れているものがあったりするときは視点回転で見つける、みたいなゲームデザインで作られていて、当然マップもその思想で作られている。オクトパストラベラーは視点は固定なので、思想からして違うし、ゲームデザインに合った画作りも当然違う。ドラクエ7ドラクエ9でオクトラみたいなヴィネット風のポストエフェクトをかけまくるとたぶんすごく遊びにくくなるだろうと思う。オクトラは操作キャラを中心に見て、周辺はぼんやり見る、だからマップ探索は操作キャラ目線の手探り感がある。一方ドラクエシリーズはもともと俯瞰でマップを見て、迷路のつながりを推測しながら探索する。だから壁越しに宝箱があって、どこかから回り込んだり、上下階から移動してきたりするんだろうな、みたいな見せ方でレベルデザインされている。ドラクエ7ドラクエ9もこの思想を発展させたゲームなので、オクトラくらいカメラの視点が下がると同じマップでは遊べなくなると思う。

ドラクエ3はHD2D向きではない?

それを踏まえて。

ドラクエ9は狭い通路の壁の陰に敵が隠れていて操作キャラも見えなくてみたいなマップも少なからずあった。そのドラクエ9でさえ、3Dを考慮したマップデザインになっている。、基本的な動線として手前にものが来ないように、というところとかですな。
で、もともと2Dで見下ろし型のマップをそのまま3D化して、しかもオクトラみたいな視点にする、となると結構無理があるように思う。

そもそもなんだけど、ドラクエ3はもともとファミコンのゲームである。ファミコンの限られた容量で作られたゲームなので、マップは限られた容量の中で必要最低限の情報量でなんとか探索して楽しいように設計されている。結果、基本的に通路は1マス幅だし、家の室内もとても狭い。上下左右に、迂回しながら、マップ全体をくまなく歩くようなダンジョンが多い。ファミコンの限られた容量であれだけのボリュームのゲームを作るにはそういう工夫が必要だった。

試しにファミコンドラクエ3のマップをマイクラで再現してみてほしいのだが、マイクラの一人称視点で遊んでみてめちゃ窮屈だなと感じると思う。Bakinをお持ちの方は試しに1マップ作ってみてほしい。壁の高さを確保するとほとんど視点が遮られるな?ということに気付くと思う。何の工夫もなしに単に3Dマップ化できるかというと、おそらく無理である。

そもそもSFCでリメイクした時点で、リメイクにあたって実は各マップちょっと広くなっている。頭身と壁の高さが増えたのに合わせて、壁の回り込みの分通路が広くなっているし、各オブジェクトも、たとえば棺桶は頭身に合うように横長になったりしている。それにあわせてマップのデザインもちょっと手が入っていて、FC版まんま同じにはなっていない。

もしオクトラみたいなルックアンドフィールでドラクエ3を作ろうと思うと、おそらくマップそのものの広さを大胆に手を入れないと行けないと思う。そうすると、もとのドット絵をそのまま再現する形だと、ただ引き伸ばしただけで情報密度がスカスカになったりする。SFCのグリッド感はいったん忘れて自由なスケールで配置するようにしたほうがおそらく手触りもよくなるだろう。

それでもなお、マップをくまなく歩くようなものはオクトラの視点だとしんどいように思う。建物の入口が上にある、みたいなのも普通にある。どうすんのかな。ゲームデザイナーの腕の見せどころだとおもうが、わたしは堀井雄二をとても厚く信頼している。レベルデザインの神様の一人だと思っているので。

そういうわけで一番最初に出てきた開発版の画像からすっかり変わって単に3Dマップを2Dキャラが動くような感じになったのは、たぶん実際にゲームとしての面白さとか完成度を考えたらこっちにするしかなかったんちゃうかな、と

ライブアライブがHD2Dに向いていた理由

ライブアライブのマップデザインがHD2Dに向いていたから。オクトパストラベラーを実際にプレイした人はよくわかると思うが、オクトパストラベラーは見下ろしよりもベルトスクロールに近いちょっと低めの視点なので、手前に物があると視界が遮られてしまう。隠し通路はこれを利用して作られているが、基本的な動線として、たとえば建物がZ軸で重なって並ばないようにしたり(建物の入口は手前から奥方向なので、建物の手前に建物があると奥の建物の入口が手前の建物で隠れてしまう)、Z軸で通路が重なるときは通路間の距離を広めにとったり、高低差をつけたりということをしている。

ライブアライブはもともとそういうマップデザインになっているところが多く、HD2D向きだった。SFCの後期のスクウェアRPGは、一画面に収めたときの見栄えをかなり意識した画作りをしているというか、「上からではなく手前から見る」ようなイメージの画面構成が多い。FF6とかロマサガ3とか見てもわりとそうなっている。こういう「上からではなく手前から見る」ような画作りがHD2Dに向いている。

ドラクエはもともとが上から見下ろしたマップを元にゲームデザインされてきたシリーズだし、3なんかまさにその典型なので、ライブアライブとは話が違うだろうと思う。

まとめ

  • 見下ろしとサイドビューの違いが大きいよ
  • 見下ろしは被写界深度とかチルトシフトとかヴィネット風エフェクトとかかけるのに必ずしも向いてないよ
  • 見下ろしに適したマップとサイドビューに適したマップは違うよ
  • ドラクエ3は見下ろしの最適解を突き詰めたゲームだから、サイドビュー向きの画作りにするにはドラスティックな変更が必要だよ

こちらからは以上です。