攻略順フリーであることとレベル制の親和性の低さをどう解決するか

幾分批判的なトーンでRPGは一本道であると言われる。これを解決する方法の一つが攻略順をフリーにすることで、巷ではフリーシナリオとか、あるいはエリア間移動をシームレスにするところまでを含めてオープンワールドと呼んだりする。エリア間移動をシームレスにすることは、言ってみればステージの垣根を視覚的に取り除く行為でもあって、適正レベルに応じてステージを区切ったときにあらわれるアトラクションテーマパークを遊ばされているという印象を拭うのに効果的でもある。今回はそっちはひとまず置いておくとして、フリーシナリオの話をしていく。

フリーシナリオでステージごとに適正レベルを設けると実質一本道になり、上手く機能しない。一本道であるほうがプレイヤーにとって望ましい場面すら出てくる。それでもフリーシナリオにはプレイヤーが自発的に選択しているという実感があるので、推奨攻略順が一本道になる場合でも、攻略方法をプレイヤー自身が見出すことで、ある種のショートカットをして早解きが可能、みたいなゲームは存在するし、それも一つの解決だろうとは思う。

しかしこれは攻略順をスキップしているだけで、攻略順を組み替えていることにはならない。

効果的に攻略順を制御しているゲームは、ほかのジャンルをみるといくつか見られる。たとえばロックマンはボス武器の相性によって攻略順をコントロールしているが、プレイヤーによって得意不得意もあり、必ずしもその順で攻略しなくてもクリアできるし、そのような攻略方法も許容される。このようなあるステージを攻略することで次のステージの難易度が下がるという方法は参考にしてよさそうだ。

一方この方法であっても、やはり推奨攻略順のようなものは生じるし、おおよそのプレイヤーはその方法で攻略するようになる。自分で考えて正しそうな攻略順を編み出す時代にはそれでよかったが、現代ではインターネットによって即座に最適攻略順が提示されてしまう。結果的に一本道になる。もっとうまい解決方法はないだろうか。

サガシリーズのいくつかの作品では戦闘回数で敵テーブルが変わるという仕組みを取り入れることで、プレイヤーがどの順で攻略してもレベルのエスカレーションが発生することを目指している。なんだけど、これ「敵との戦闘を最低限に抑えることで難度上昇を抑え、アドバンテージをキープする」のが目的になり、結果的に「敵と戦闘せずに戦力増強可能なシナリオを選択していく」ことにインセンティブを生じさせている。平たく言うと、この方法でもやっぱりおおよそ同じ順で攻略していくことになる。とはいえガチガチな攻略方法を構築しなくてもクリアできるようなゲームバランスになっているので、一本道感は薄い。ある程度は成功していると言っていい。

ところで、このようなゲームの進行度を攻略エリアではなく敵テーブルでみるとどうか。攻略エリアは自由になったが、敵テーブルは進行度と同期している。ゲームが進むにつれて出てくる敵が変わる。このゲームからエリア探索を排除し、敵との戦闘だけを行うようにすると、一本道のゲームになる! RPGは探索と戦闘の両輪で構築されている。戦闘が一本道になるということは文字通り片手落ちになってしまう。もちろんボスはエリアによって異なるのだが、これはたとえば学習度で攻撃パターンが変わるのようなギミックで制御している。ここに攻略の多様性を見出すことはできなくはないが「通常敵との戦闘を通じてボス戦の予習をする」という仕組みを組み込もうとすると、結局一本道じみてくる。

「通常敵との戦闘は稼ぎ」と割り切り、ボス戦だけでプレイヤーにゲームを学習させるというのは一つの解決である。そのような方法はロックマン方式との相性がいい。

ランスXはロックマン方式を採用しながらも、ランダムで入手したキャラクターによってステージの向き不向きが変わるというデザインを取っている。毎回同じプレイングが通用しないが、周回を重ねるとキャラが強化されたり、周回ポイントでレベルが上がりやすくなったりなんだりというデザインになっている。ステージクリアの方法で難易度の上がり方が変わるのも妙手で、早解きすると急激な難度上昇を誘発する。じっくり攻略することで自軍の戦力増強と難度のエスカレーションのバランスを取ることができるが、攻略にはタイムリミットがあり、のんびりしていると人類は破滅する! これを周回によってプレイヤーに学習させながら、周回ボーナスを与えることで、ゲームプレイを通じたレベルの上昇、プレイヤースキルの上昇を実現している。

これは今あるゲームデザインを組み合わせて出てきたものなので、それほど不思議なものではない。


これは思いつきのアイデアにすぎないものだが、敵ごとに「理解度」というステータスを設定し、同じ敵と複数回戦闘することでたとえばクリティカル率、命中率、回避率が上がったりするような仕組みを設ける。初見のエリアには初見の敵が登場するので、前エリアの攻略が通用しない、ということをパラメータでシミュレーションするわけだ。そのかわりにキャラクターのレベルは撤廃するか、きわめてマイルドにする。

この仕組みではエリアを通じたエスカレーションを導入する必要はない。エリア内でエスカレーションを閉じてよい。が、あるエリアの攻略が他のエリアの攻略を有利にするような仕組みは導入したほうがよい。相互の影響が薄いゲームは攻略順が自由なのではなく、単に別のゲームをバラバラに並べただけのものでなってしまう。たとえば同系のモンスターには「理解度」ボーナスがある程度適用されてもいいだろうし、あるエリアを攻略したときに得られるアイテムが後のエリアの攻略で有用という仕組みも有用だ。

これは言ってみればエリアごとに進捗をリセットせよ、というアイデアだ。違うことをやっているのだから、違うレベルを要求すればよい。全体を通じた進捗度を並行して上げていくことで、プレイヤーとしては攻略が進むにつれてできることが増えていく実感を得られるようにできる。というアイデアは、実のところRPG以外では普通に存在する。たとえばローグライクゲームは、毎回進捗がリセットされる。しかし攻略方法はプレイヤーに蓄積される。ここをプレイヤースキルではなくゲームシステム側でカバーするアイデアを採用したのがたとえば周回制のゲームになる。両方を組み合わせたゲームというのもある。前述のランスXもそうだが、プレイヤーが死に覚えの間にもゲームシステム的なリソースが蓄積されて攻略難度がマイルドになるというアイデアは、実にうまい方法に思う。実際のところはRPGのレベル制と同じことではあるのだが、別にそれは一つのゲームで閉じていなくてもいい、ということなのだ。


ここまでをまとめて振り返って結論を出していこう。

RPGはレベル制を導入することで、プレイヤーの学習以外の方法で難易度カーブをコントロールするという方法を生み出した。しかしこれによってステージの攻略順はある程度固定化され、ゲームの自由度が下がってしまった。ゲームの自由度を取り戻すために攻略順フリーを導入したら、今度はレベル制が壊れてしまったので、攻略順に関わらず難易度が上昇する仕組みを導入した。そうすると見かけ上攻略順を自由にすることはできたが、戦闘を切り取ってみると実は一本道になってしまっている。レベル制とフリーシナリオを両立することはむずかしい。

以下のような解決アイデアがある。

  • レベルの一元管理をやめ、エリアごとに細分化したレベルを導入したり、ゲームを横断したレベルを導入することで、難度のエスカレーションをパラレルにしたり、多段にしたりできる。
  • 次に進むべきエリアの提示をゲーム毎にランダムにすることで、多様なゲーム展開を可能にする。

こちらからは以上です。