振り返り

ぼくの育った地元は終身雇用信仰が強い地域だった。だったというのは今どうなっているか知らないからだけど、そういう「土着信仰」はそうそう簡単に変わったりしないから、今もそうだろうと思う。

たぶん8~9年くらい前のことだったと思う、二度目の離職で無職だった頃、中学の同級生と飯を食う機会があった。二度の離職をして無職だという旨を伝えると「お前それもうやべーよ、この先どうすんの」と大層心配されたことがある。当時の自分は精神的にも参っていたので、これは結構堪えた。地元ではその後バイトでプログラムを書くなどしていたが、その頃ブログのプログラミング記事を読んだ友人にありがたくも声をかけてもらって、なんやかんやあって今は東京にいる。

関東のIT系は職場を転々としながら働く人間というのがそんなに珍しいものではなくて、あんなふうに不安を煽られたのは何だったのだろうという気持ちになる。その同級生とは今はもう会っていない。

それからは、昔取った杵柄ではなく、自分が業務に携わったことのない言語やフレームワークを意識的に選んでやってきた。選べる環境だったからというのが大きい。そのときの地固めのおかげで今がある。30過ぎてから地固めをしても決して遅くはなかった。

今の自分に「人権」があるのはそういう基盤があるからだと思っていて、さもなくば、経歴の傷によって、コミュ力のなさによって、年嵩によって……などなどの理由で減点され、彼らの言う「まっとうな人間」からは何枚か下のところに置かれて、「ランク付けされた人権」で扱われることになる。いや、ぼくの育った地元ってそういうところなんですよ。

基盤ができるまでの間、人間として扱ってくれたのはお袋と幾人かの友人だけだった。そのおかげで今生きている。