この世界の片隅にという映画を観ました

観てない人はぜひ観てほしいんですけど、かいつまんでよかったところを書くと、

  • 全体的にとても丁寧。とても人間っぽい表情、仕草、リズム、間のとり方。すずさんをはじめとしたみんなが生きているのを確かなものとして実感できた。
  • すずさん役ののんさん、めちゃくちゃよかった。名演というか、怪演とでも言うべきものを見た。すずさんは確かにそこにいたのだ。
  • すずさんを取り巻く他のキャストもよかった。細谷さんはこういうちょっとぶっきらぼうな役をやるとピタッとハマるし、朴訥さの中に優しさを感じさせるところも細谷さんの声とあいまってとてもよかった。
  • 個人的にすみちゃん役の潘めぐみさんを応援しているんだけど、それ抜きにしてももうなんていうかすずさんとの掛け合いが本当にいとおしくて、いまでもまだふたり笑い合うのが耳元に残っている感じする。
  • 音響へのこだわりを感じる。ぜひともいい音響の劇場で見てほしい。ぼくもできることなら立川極上音響上映で見たかった。まだやってるのでお近くにお住まいの方はぜひ。
  • 絵、作画もさることながら、演出がとてもよい。作画というか画面の雰囲気は予告編を見ると伝わると思うのですが、それ以上に演出が非常によい。これはぜひ劇場で見ていただきたい。物語に寄り添うような絵。
  • この作品の考証、相当力を注いだのでしょう。めちゃくちゃ緻密に、けれども自己主張はせず、そっとそこに存在している。それがあるからこそ、そこに生きる人々の暮らしが確かに感じられるのではなかろうか、と思います。
  • 劇伴と挿入歌、とてもやさしい。だからちょっと切ない。切ないけれどもやさしい。

話については多くを語ることは避けますが、これは多分ごくごく日常の話で、70年前にはごくごく当たり前の光景がそこにあったのだろうと思います。観たほかの方も書かれていることではありますが、その70年前のごくごく日常を、とりたてて悲しくも、とりたてて明るくも、どちらでもなく、ごくふつうに描いた作品なのだと思います。

戦時中の話というとどうしても悲劇的な側面を強く出してしまいがちではあります。そこに躊躇があって観られていないという方がもしいるのならば、「片隅」は、そうではなく、やるせなさとかやりきれなさとかかなしさとかせつなさとかそういうものがあってなおやさしい、やさしさを感じられる映画です。「片隅」は、この世界の片隅の物語なのだ、ということを踏まえて、ぜひ見に行かれたい。

すばらしい映画を見た。見ることができてよかったです。