はい、というわけでね。
という作品を書いています。 その紹介をします。
1. まぼろし国の食卓よりとは
まぼろし国の食卓より(以下 #まぼ食)は、異世界に転生した主人公が異世界の食事情の厳しさに耐えきれずおいしい食事をもとめて奮闘する話です。でもそういう話は一ジャンルとして確立されてて先行作品がけっこうありますね?
2. まぼ食で書こうとしていること
せっかく異世界だから、異世界の文化、風土に沿った食事があるはず、異世界ならではの料理が出てくる話を書きたい――ということを、ダンジョン飯を読んだ後くらいから思うようになりました。
というわけで、まぼ食では「異世界で現代地球の食事の再現をしない話」を目指して書いています。
もちろんこれは先行作品がそうでないことがダメだという話ではないです。
グルメものって、日本食を外人が食べてリアクションするとか、日本人が海外の食事を食べてリアクションするとか、いろいろあると思うんですけど、いまの異世界のグルメものは、わりと前者寄りが多いので、後者みたいな作品があってもいいよね、くらいのつもりです。多様性はよいことです。
3. 一章はパンを再現する話みたいですけど
パンはセーフ!っていうわけじゃないんですけど、プリミティブな調理方法は、どこの世界にいったって通用すると思うので、たとえばステーキとかローストとかグリルを禁止するかっていうとそういうわけではないです。
それでもあえてパンがないことを題材に一章を書こうと思ったのは、日常的に食べるものがまず違うというところを示して異世界に来てしまったということを書きたかったんですが、そのあたりは読んでもらえれば実感してもらえるかなあと思います。
4. 食材について
せっかく異世界なので、食材から設定制作しました。コムギもオオムギもありません。ヘラムギという穀物があります。基本的には中世ヨーロッパベースではありますが、アメリカ大陸原産の食材はモデルとしてもほとんど採用してません。作物として強いので。
イネとダイズも作物として強いので出てくる予定がありません。ほかにも強いという理由で「禁止作物」指定されているものがいくつかあるんですけどそれは今後のお楽しみということで。
一話(プロローグの次の話)を読んでもらえばわかるのですが、作物だけじゃなくて動物も設定を起こして地球の動物と異なる動物を登場させています。
最初はコムギだけ禁止のつもりだったんですけど、コムギだけ禁止してみると今度はコムギがないのにあれがあるのは納得できないな、みたいな感じで、どんどん設定がふくらんでしまったけど、設定を作るのはたのしかったし、そのへんも楽しんでもらえればなーという感じです。
実のところ、かねてからずっとやりたかったことで、これは完全に趣味ではあります。でも、ぼくはぼくが好きなよさを伝えるためにも書いているので。
ただ、設定を起こしたからリアル!とかそういうことは思っていなくて、そこがウリではないんですけど、設定を用意したからには、それが前提になる話がちゃんと出てくるようにはなっています。
5. ヒロインについて
お嬢様属性に弱いということをかねてからお伝えしてきたと思うのですが、はてぼくはお嬢様ヒロインって書いたことあったかしらんと思い返してみるとまったくなかったし、それに気付いたときからお嬢様ヒロインを書くべしという要請が内から発せられるわけです。
一章に登場するリリーは、そういうわけで、ぼくが書くはじめてのお嬢様です。
6. いま異世界転生なのはなんで
いまというかもともと神立地を書くときに幸福資源を題材にした話を書きたいということを思っていて、神立地のサブテーマとして「異世界の食」があったんですが、それをひっくるめて書くだけのパワーが当時も今も足りていないことに気付きました。
書きたいものが複数あると軸がブレてなにがしたいのかわからなくなりがちなんですけど、そういうわけなので今回は食をメインにした話にしぼって、話をシンプルにしようと思いました。
神立地はほかに経済や言語や宗教さまざまな題材をサブテーマにする予定でした。さすがに盛り込みすぎですね。それら書ききれそうもないサブテーマについては今後なにかしら形にしていくつもりです。
話がそれてアピールじゃなくなったので気を取り直して。
異世界転生や異世界転移は、そうじゃなくて現地の人物が主人公の、ピュアファンタジーでもいいんじゃないですか、ということはよく問われていると思います。ぼくもそれは思うことがありますし、実際Web小説も最近だと現地人が活躍するファンタジーも増えています。
で、転生を選んだのは視座の違いを書きたかったことと、視座が違うことによって「異世界」をあぶり出したかったこと、が理由になっています。前述したようにパンすらないことを書きたかったけど、それはパンがない世界の人間の視点より、パンを当たり前に食べる世界の人間の視点のほうが向いています。
なので「日本人が海外に行って現地の料理を食べる」という例えがあるんですけど、現代日本人の文化的視座によって異世界を書くということ自体は、流行り廃りとか関係なしに続いてほしいなあということを思っていますし、ぼく自身、今後も書いていくでしょう。
おわりに.
めっちゃ長くなってしまったけどこのあたりによさをちょっとでも感じたら、読んでもらえたらさいわいです。
読み飛ばした人向けに、まぼ食の魅力を一文で書いておきます。
まぼ食は、現代日本から転生した主人公が、パンもない、いろんなものが足りない異世界で、異世界ならではのおいしい食事を目指して、異世界の食材を使って試行錯誤する、異世界料理物語です。
というわけで、たのしいお話になっていると思います。ふんわりお読みいただければと思っています。 ご意見ご感想もお待ちしていますのでツイッターなどからお気軽にどうぞ。
こちらからは以上です。