ダンジョンウィズガール感想

個人的には充分楽しめたんだけど、同じくらいに不満を感じてもいる。これから書くことはかなり強めの批判になるので、dlsite の作品ページへのリンクは控えさせていただく。最低限の礼儀というか、作品と作り手に敬意を払うからこそ、作品を出汁にしてアフィリエイトしたりはしないよという、まあ自己満足ですね。作品は面白いし値段分ちゃんと遊べるゲームなので、気になった人は買ってプレイするといいと思います。

どんなゲームか

  • 冒険者になったけど上納金をおさめないといけないのでがんばって稼ごう。
  • なおダンジョンに潜るとケガレが溜まるのでヒロインに発散してもらう必要があるぞ! ケガレを解消するとヒロインの能力が上がるのでがんがん発散してもらおう!
  • ダンジョン探索はランダムに配られたカードを選択して進行するノンフィールドRPG。たくさんのイベントと選択肢でプレイするたびあたらしい展開に出会えるぞ!

という感じの内容。戦闘システムはオーソドックスなターン制RPGながら、キャラクターの成長方式がレベル制ではなく、装備と前述のケガレ発散の能力強化、その他にランダムに発生する強化イベントでの成長となっているので、敵とがんがん戦ってどんどん強くなるというサイクルではなく、探索時の状況判断が重要になってくる。

公称ジャンルはローグライトということになっているが、ランダムイベントは発生するがローグライクのそれとはプレイフィールがけっこう違うので、ローグライクっぽい体験をしたい人向けではないかなと思う。このあたりについては後述。

よかったところ

ゲームプレイは新鮮。Slay the Spire とかランスX みたいなわりと最近のゲームの手触りに近い。ノンフィールドRPGなのでフィールド探索型のRPGで失敗しがちなデザインのアンチパターンはおおよそ回避できている。だだっ広いマップを冗長に歩き回ったりプレイヤーの探索に割り込んでランダム遭遇が発生して探索を中断させたりということがない。

各ランダムイベントのテキストもうまく雰囲気を表現している。ゲームブックをプレイしているような感覚があり、こういうのが好きな人にはたまらないだろう。

戦闘のバランスは比較的良好で、順当に成長すれば順当に攻略できるようになっていく。状態異常がちゃんと有効で、持ち込むアイテムの価値が大きい。一方で重量制限が持ち込みを抑制する方向に機能していてバランスが取れている。
入手できる装備にもランダムで効果がついていて、よりよい装備品を狙って潜るハクスラらしい楽しみがある。

キャラクターの成長を実感できるのは何よりで、強い武器を手に入れたり、ランダムイベントでステータス上昇したりしてどんどん探索が楽になっていくのは爽快感がある。

グラフィックは美麗でヒロインをはじめとしたキャラクターたちのデザインもよい。モブ一人とっても個性的で印象に残る。こうしたところの作りが丁寧なのは好感触。

と、ここまでの段階ではとても面白そうに思える。実際プレイから1~2時間くらいはこの面白さを体験できる。

よくなかったところ

  • 選択肢の少ないゲームプレイ

探索パートはランダムでプレイの幅が広いような謳い文句になっているが、実際はぜんぜんそんなことはなく、プレイヤーはくじ引きをして、その結果を見てとることができる選択肢は、実質的には探索に積極的になるか消極的になるかの二択しかない、という感じ。「公称ローグライトだけどローグライクみはないよ」というのはこのへん。
だから実のところ、今作のゲームプレイはゲームを続ければ続けるほど単調になっていく。

たとえばいわゆる不思議のダンジョンでいう即降りのようなプレイはできない。
今作の探索では二種類のリソースを消費して進行することになる。一つは行動力で、もう一つがケガレ。行動力はマイナスになると進行のたびダメージを受けたり、宿屋に帰ってからヒロインが宿屋の主人に襲われたりする。ケガレは蓄積することでダイスロールにマイナスの修正が入り、一定値を超えると探索を阻害するようになる。
つまり行動力を節約し、ケガレの蓄積を抑えながら進むということが求められるのだが、いわゆる不思議のダンジョンでの即降りに相当する選択は今作では取ることができない。
敵と戦闘したりイベントを起こしたりするには行動力を消費するし、宝箱はケガレの上昇を伴う。これらのコストを払わずに探索を進められる選択肢は罠だけ。罠はダイスロールに失敗するとペナルティが発生するので、最も安全なのはケガレの上昇を飲んで宝箱を選択して開けずに進む、その次に安全なのが行動力を使って敵との戦闘を選んでけむり玉で逃走する、となる。だからしいていえばケガレ上昇にかまわず進むのが即降りかなという感じ。

Slay the Spire だと戦闘を回避して休息や商人が多いルート取りをしたりできるんだけど、今作は毎回ランダムにカードが配られるのでどのカードを選んだから次どのカードが出やすいみたいなことはなく、完全に天に運を任せることになる。
ローグライクは運要素が強いが、悪い目を引いたときにリカバリーするためにプレイヤーが頭をフル回転させてどうこの場面を凌ぐか考えるのが楽しいんだけど、今作はその挽回のチャンスはもらえないことが多いので、あらかじめリスクのある行動をできるだけ取らないようにする、くらいしかやることがないなあと思う。せめてダイスロール時にアイテム消費して出目操作できたらよかったのにね。作った方はシレンプレイヤーらしいのにそのへんの発想がなかったのか、実装難度から諦めたのか、ちょっとよくわからない。

わたし自身は一周目の二回目の上納金を納めたあたりで半ば飽きてしまって、最深部の30階まで降りた時点でノルマ達成に必要金額稼ぎ終わっていたので後はもう探索せずに日数送って一周目を終えた。二周目はもっとひどくて、トゥルーエンドフラグを立てたら未回収のイベントのためにオートセーブを駆使して狙いのイベントが出るまでリセマラをするという、おおよそゲームではない何かをプレイしている感じだった。確率の話になるのでこのへんは別途。

  • 随所のテンポの悪さ

上記のように、今作は公称ローグライトという制作意図に反して単調なゲームプレイになりがちで、同じようなことの繰り返しになりやすいのだが、これに拍車をかけているのが、合間合間のトランジションの多さであったりウェイトであったりキー入力待ちの多用であったり、である。ツクールMV製のゲームによくある作りなのだが、Ctrl キーによるスキップはトランジションやウェイトの高速化に対応しておらず、シーン切り替えなどの場合では決定キー長押しによるイベント動作倍速化のほうが早い。キー入力待ちも Ctrl キーではスキップできない。これはできないのが正しいと思うので、多用していることが間違い。何回も見るイベントでウェイトやキー入力待ちがあるので、Ctrl キー押しっぱなしで進行、というわけにもいかない。

ケガレ除去イベントに至ってはシーン再生自体をスキップすることができないので、ケガレ除去をするなら毎回シーンを見なければいけない。このせいでどうしても探索が間延びしてしまう。

探索シーンのトランジションもずっとプレイしているとテンポが悪く感じる。世のローグライトはもっとこういうところサクサク進められるようになっている。ローグライトはプレイサイクルの高速性が重要なゲームジャンルだが、本作はローグライトを謳うわりには、そのあたりをあんまり重要視していないように感じた。

戦闘シーンも通常攻撃の演出によって演出時間の長さに違いがあり、都度異なる長さのウェイトが発生してリズムがガタガタになってしまっていた。こういうところのリズムのよさはゲームの気持ちよさのために重要なので、次回作以降は戦闘の演出にも注意を払ってもらえたらよいなと思う。

  • 急激に成長するヒロイン

ヒロインは一日の終わりに宿屋でえっちすることで能力が強化される。具体的には行動力を1消費するとステータスが1上昇する。たとえば中出し1回につき攻撃力が1増える。初期値は5で限界値は75になっているので、70回中出しすると素手の攻撃力がカンストする。一日の行動力は6なので、70回のためには12日必要……に見えるが、実際にはダンジョン探索中にもイベントによって行動力を消費するかわりにステータスが1上昇する。探索中は行動力を回復する手段があるので、ずっと探索し続ければ一日で攻撃力をカンストさせることもできる。そこまでやらないにしても、意識的にケガレを解消していくと勝手に能力が育っていく。結果、好感度が上がった中盤以降にヒロインは武器込みで攻撃力上限に達してほとんどの雑魚どころかボスクラス相手でも苦戦しない強さになる。RPGは成長すれば戦闘が楽になるべきなのでその点に不満はないのだが、成長機会が主人公に比べてあまりにも恵まれすぎており、早期に強くなりすぎてしまうように思う。ケガレを解消するだけでもかなり有利だし、探索中の能力上昇はいらなかったんじゃないかと思うので、このあたりは「ケガレを解消すると能力が上昇する」という設定自体に問題があったかもしれない。

ちなみに能力値の上昇量はケガレの蓄積量とは関係ない。ケガレ0でも行動力1でステータス1上昇する。だからまあ設定に即した成長になってるかっていうと実はそうでもない。なんなら探索は金のためだけにするもので、上納金のノルマに必要な金さえ手に入っていれば探索せずに寝てるだけのほうが成長して強くなるまである。素手でも武器装備してても上限攻撃力が一緒ってのも考えものかもしれない。

その設定だったらケガレの蓄積に応じて成長量が変わったほうがよかったなあと思う。一気にたくさん消費するほど成長量が大きいとかだったらプレイヤーがケガレを溜めるというリスクを取りながら探索する動機づけになる。

  • 不適切な確率設定

子供に見える冒険者、というNPCがおり、このNPC用のえっちシーンも存在するのだが、このNPC用のえっちシーンが存在しそうだなというのは回想シーンに抜けがあってはじめて気付くレベルで、おそらく普通にプレイしていると存在に気づかないままクリアする人が大半なのではないかと思う。

存在に気づかないまま、というのがポイントで、存在に気づくことができれば意識して攻略できるが、気づかなければ攻略のスタートラインにすら立てない。

子供に見える冒険者、以下子供冒険者は、一周目に確定で出会うことができる。出会った後、探索中にNPC遭遇カードを引いた上で、子供冒険者が襲われている場面に遭遇して助ける、ということを二回こなした上で、もう一度NPC遭遇カードで子供冒険者にあってケガレ除去を依頼してはじめて、回想シーンに登録される。

確率を整理しよう。

NPC遭遇カードは、だいたい6回に1回くらい出現する。NPC遭遇イベントではおおよそ10回に1回子供冒険者が出現する。この子供冒険者が襲われているケースは体感では4回に1回くらい。カード選択一回で子供冒険者が襲われているシーンを見ることができる確率は 0.167 * 0.1 * 0.25 なので、 およそ 0.4175% になる。
ゲーム中、カードの抽選機会は最低でも100回はある。仮に100回だとして、0.4175%のイベントを2回以上発生させられる確率は、6.6%。15人中14人はケガレ除去依頼のフラグを立てることができないままゲームをクリアすることになる。これはあくまでケガレ除去を依頼できるようになるために必要な過程にすぎないので、回想シーンに登録されるためには更にもう一度子供冒険者に会わなければいけない。少なくとも3回は出会う必要があるが、子供冒険者に出会う確率がそもそも1.67%しかない。カード抽選100回中少なくとも3回以上子供冒険者に会う確率は23.41%で、約4人に1人くらいしか3回以上会わないままとなる。回想シーンの登録条件を満たすには2回助けた上で3回目に会う必要があるのだから、これよりもっと厳しい確率になる。ただ今ざっくり概算しただけでこれだけしんどい数字になっているのだから、テストプレイする前にこれは無理って気づかないといけない。確率は計算すれば求められる。計算してください。頼むから。

今挙げたのはあくまで子供冒険者の例だけど、体感では他にもこういう感じになっているところがある感じがする。全体的に確率についてあまりに楽観的すぎる設定になっているんじゃないかという疑いがある。

それとは別で、ダイスロールが2d10なんだけど、0~9のダイスになっていることを失念した目標値設定になっている気がする。0~9のダイス2個振ったときの期待値は9なんだけど、ほぼ平目しか期待できない序盤から達成値7とか8を要求されるし、前述のとおりケガレが蓄積するとマイナス修正が入るので、全体的に達成値が厳しいと感じる。主人公の装備が充実したり能力値が伸びてくると修正が最大で7つくので、こうなるとだいぶ安定してダイスロールに臨めるんだけど、ここまでになるのはやり込んだ後で、もうレア掘り以外にやることないレベル。レア掘りしても能力値はそれ以上伸びないしあんまり意味はない。

ちなみに2d10は2d6と違って出目1刻みの出やすさの振れ幅が大きい。2d6の7は特別出やすく、2/3で5~9の目が出て、残りの1/6ずつで2~4、10~12が出るようになっていて、極端な目は出にくいようになっている。一方2d10だと出目1ごとに1%刻みで確率が変わるので、8と9とでは出やすさに1%しか差がない。2~6のいずれかが出る確率は15%ある。今作の2d10は前述のとおり0~9のダイス2個なので、2d10の2~6というのは、今作では0~4のことである。つるはしを振るには達成値8が必要で、さもなくばつるはしが折れるが、15%で0~4を引くダイスで達成値8を、と言われても、つるはしが折れたらリセすることにしてオートセーブ直後に掘るか、としかならない。こういう要素がローグライクの緊張感を損ねているように思う。2d6のほうがいいかというとそうでもないが、本作のダイスロールは2d10というシステムである以上、出目の信頼性が低いので固定値信者にならざるを得ず、固定値伸びても後半のダイスロール達成値14とか達成値16とかは、まあまともにやる気が起きない。上にも書いたけど出目に修正が入る使い捨てアイテムでもあればよかったと思う。

ツクールのプリセット素材の品質は高いが、せめてゲームの顔たるタイトルシーンくらいはツクールのプリセット以外のBGMにしてほしいと思うし、効果音もデフォルト以外にしてほしかった。ヒロインの背景ボイスは素材集を使っているようだったが、これもやや単調で、絶頂ボイスもなかった。サウンドはプレイしている間ずっと耳に入ってくる。ゲームシステムでワクワクさせようと思うなら、同じくらいサウンドにも気を使ってワクワクさせてほしかった。

総評

ダイスロールや確率設定には難があると書いたものの、難易度が高いわけではない。ノーマルエンドを見るだけなら、そのために必要な目標を達成するには、このあたりのことはこなす必要がない。トゥルーエンドも、条件がちょっとわかりにくいと思うが、条件を説明してくれるNPCも用意されているし、条件達成も固定値マシマシにしてしまえば後は試行回数で殴るだけでよい。ただ、ダイスロールや確率のシビアさから、プレイヤーがやりたいことをやらせてもらえてない不自由さが終始つきまとう感じがあり、満足したというにはどうしても口ごもってしまう。

引き継ぎありで2周目をプレイした後で最初からプレイし直して本作のゲーム知識をフルに活かして攻略し尽くしたところで、このゲームでの遊びはこれ以上やることないなと思ったんだけど、それくらいには遊ぼうという気持ちになったので、プレイして楽しくなかったとは思っていないけれど、しかしだからといってプレイして感じた不自由さを甘んじて受け入れられるかというとそんなことは全くないし、こういうゲームを「ローグライト」と名乗ることには苦言を呈したくもなる。というかそもそもどんなゲームであれ「ローグライト」を名乗るな、というのがわたしの主張ではあるんだけど、それはまあいいや。別の記事に書いたので。

最後に遊び尽くしたところのスクショでもはっておく。

4日目で62万。

主人公は装備込みでぼうぎょカンスト手前、すばやさも60超えて修正値+6ある。

ヒロインは暗躍する舞踏家セット+アリシアセット、伝説つき3つ。こうげきは伝説に加えて中出し成長分で60超え。

4日夜、持ち帰ったお金でウラミチの店で買ったアイテムでドーピングして行動力23ある。手元に行動力を回復させるドリンクが10本あるので、1日に合計200以上ステータスを成長させられる。こうげき、ぼうぎょ、かしこさ、すばやさ、うんの5つを装備こみでカンストさせるには充分すぎるが、そのために延々とえっちシーンをプレイすることになるので、ここでやめにした。

なおトゥルーエンドに必要なフラグは立て終わっており、探索も30階のワープゲートを解放済み。上納金を12万ほど集める必要があるが、まあこれはすぐ集まるので問題ないだろう(4日目の時点で60万貯めてるんだから当然余裕)。

どんなプレイをしたかというと、別にむずかしいことはしていない。
3日目まではレア宝箱から装備が出ることを狙って黄金の間や敵のねぐらを目指した。ダンジョン内オートセーブを使ってリセマラしたが、やってみて思ったのは序盤でも低リスクで赤装備や緑装備が狙えるので、一度引くとかなり楽になる。今回は序盤に巡礼者の靴(ランダムで行動力回復)が出たので行動力には終始余裕があった。罠も積極的に踏んでいく。序盤の罠はリスクが低く達成地も低いので序盤に罠を踏みまくって主人公を強化すると後が楽になる。夜は中出し×6。2日で攻撃力が12増える。
3日目途中からヒロインの好感度が充分高くなっているのでダンジョン内でケガレ除去をしてヒロインの攻撃力を上げていく。魔剣グレンカイナを持っていたこともあって4日目にはガーディアン相手に殴り勝てるくらいには強くなった。アリシアセットが揃ってからは一層余裕で、なんせ殴ったら高確率で魅了が発動して行動を封印できる。素の攻撃力も高まっていたので暗躍する舞踏家セットが揃ったらこれに切り替えた。伝説つきなのでそれほど弱体化しておらず、2回攻撃できる分火力は向上した。ガーディアン相手に余裕なのでだいたいの敵は相手にならない。これ以上強化する理由もないのでシルフィーセットを揃える予定はない。

やりこみの余地があったらよかったかもしれん、と思いつつも、どのみちここから先は同じことをするだけなのでここで終わればいいやという気持ち。

ここまでやるくらいには楽しんだので、まあ楽しかったです。

こちらからは以上です。