続・ローグライトというジャンル

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あれからしばらく経って、だいたいわかってきた。こと日本においてローグライクという場合は不思議のダンジョン系を、ローグライトという場合は Slay the Spire オマージュを指すことが多い。Slay the Spire をローグライトと呼ぶことはほとんどない。ローグライクだと言ってることが多いと思う。じゃあなんて Slay the Spire オマージュだとローグライクを名乗らないのかはよくわからないが、肌感では Slay the Spire みたいなノンフィールドRPG のことをローグライトと呼ぶっぽいような気がする。ローグライトを名乗るゲームの中にはあきらかにローグライクを名乗っていいいような要素を備えているものも少なからずある一方で、ローグライクとは異なるプレイフィールのゲームも多いと感じている。

前者はある種自主規制的にローグライクを名乗ることを控えている感じで、後者は意図してローグライクの要素を削いでいる感じ、というより単にランダム要素の強いノンフィールドRPGを指してローグライトと呼んでいるような気がする。

これははっきりと批判したいことなんだけど、後者のローグライトというジャンル名は、もはやノンフィールドRPGレベルデザインを省力化するための言い訳に成り下がっている。

ノンフィールドRPGローグライクではなくRPGである以上、おおよそのRPGと同様にシーケンシャルにゲームが進行していく。ローグライクは必ずしもそうではない。プレイヤーが望むと望まざるとゲームが進行し、準備ができていなければ死ぬというのがローグライクであるのに対して、RPGというゲームは基本的にプレイヤーが進行をコントロールできる。コントロールできないゲームもあるがそれはあくまで派生形であって基本形ではない。そういうプレイヤーが進行をコントロールできる系統のゲームにおいて、乱数の支配力を高めると何が起きるかというと、最悪の場合、ただ試行回数を増やして抽選するだけのスロットマシーンと化す。試行回数に制限がないので。

ローグライクだとそういうゲーム性の崩壊がなぜ起きないのかというと、起きないように厳密に確率の調整を行っているからである。たとえばシレンではこのダンジョンのこの階層にはこういうモンスターやこういうアイテムをこの確率で配置する、この組み合わせはこの階層からしか発生しない、などということをかなり突き詰めて設定している。その調整結果が万人にとって遊んで楽しいかどうかはともかく、ゲームとして成立するための努力をしている。雑に設定すればクリアできなくなるのだから。もっとも、不出来なローグライクの中にはこのあたりの調整が不充分でゲームとして成立していないものもまったくないわけではないんだけど。

一方でRPGはプレイヤーの稼ぎを許容するから、最悪試行回数を重ねさえすればクリアできる。結果、乱数は緊張感を生むどころか、単にゲームのテンポを弛緩させてただ退屈な繰り返しにしかすぎなくなる。

はっきりと厳しいことを言うと、ローグライトはローグライクから緊張感を取り除いたジャンルだろう。それってもうローグライクでもなんでもないから、ローグを冠したジャンル名を名乗ることがむしろ害ですらあると思う。


ところで、Slay the Spire というゲームは、一見ランダム要素が強いゲームだが、その実かなりプレイヤーが選べる場面が多い。たとえばマップでは分岐先が見えているので、プレイヤーが選択をある程度コントロールできるようになっている。戦闘で出てくる敵はランダムで今のデッキとの相性の良し悪しで苦戦したり楽勝だったりするが、その結果得られるカードはランダムながら選択肢が提示されるのでくじ引きを押し付けられているという感じは比較的薄い。プレイフィールとしてくじ引きを繰り返させられているのか選択を繰り返しているのかの違いがはっきりある。Slay the Spire は後者だけど、世のローグライトは今のところ前者の率もけっこう高いなと思ってしまう。

これは何回も書いたことがある話なんだけど、よくあるRPGのレアドロップは、まずその敵と遭遇するというところで一回目の抽選があり、倒してドロップするかの抽選で、二回抽選が入る。これは確率の掛け算になる、ということを強く意識して確率を設定すべきなのだが、大抵はちゃんと計算されてなくて、テストプレイを充分に重ねるような商業ゲームでもなければ、だいたい雑な確率設定のまま世に出てしまう。それくらい乱数って難しいんですよ。

プレイヤーとしては正直厳しいなと思わざるを得ない。

こちらからは以上です。