ソフトハウスキャラのゲームの話

ソフトハウスキャラっていうメーカーはちょっと変わったゲームシステムのSLGを作っているメーカーで、毎回実験作を投入してくる。実験作なので面白いこともあれば面白くないこともあり、たとえばDAISOUNANなんかは結構大きく不満が発生したりした。

DAISOUNAN の思い出

DAISOUNANは未開惑星に不時着したおっさん二人とたくさんの美少女と主人公がなんとか惑星脱出のためにサバイバルするというSLGで、マップを移動しながら資源を集めたり女の子と話したりしながらゲームを進めていく。この女の子と話すのが曲者で、女の子がいるマスに向かって移動しようとするんだけど、女の子も同時に移動しようとする。どの方向に向かって移動しようとするのかわからないので、女の子と同じマスに入れる確率は単純計算では4分の1になる。これを繰り返して女の子との仲を深めていくことになり……正気か?となった。

パッチである程度遊べるようにはなったものの、前述の女の子の移動含め、とにかく乱数が悪さをするタイプのゲームで、SLGというよりはくじ引き、という感じになってしまっていた。もっとも、DAISOUNANは南国ドミニオンのブラッシュアップ作品なので、実験作枠に入れるのが正しいのかどうかはわからない。ただちょっと冒険した作品ではあった。

紅村かる氏をメイン原画に採用したのもけっこう冒険で、賛否両論、絵がいいというユーザもいれば違和感があるというユーザもいた。特にスレでは不評だったと記憶してるんだけど、BUNNYBLACKで再起用されて以後二枚看板として定着したことを思うと、結果論ながら先見の明があったんじゃないかという気はする。当時のエロゲ市場の流行ではなかったのは確かにそうだとは思うんだけど、ラノベの表紙なんか見てると既に「~系」というカテゴライズが難しいくらいに多様化していっていたので。かる氏は今は成年コミックを描いてるんだけど、成年コミックだとぜんぜん浮いていないというか、時代が追いついたというか、人間の体がちゃんと人間の体になってるんだけど顔はほどよくデフォルメが効いているという絵柄、割とスタンダードっぽい。

個人的にはDAISOUNANの絵もイベントシーンもめちゃくちゃ好きだった。キャラクターもなんだかんだ好きだったと思う。素材集めのしんどさ、ヒロインと鬼ごっこするしんどさなどあれど、クリアしてみればいい思い出で、まあぜんぜんよくないんだけど、これで見限るメーカーでもないよなと思っていたので、こういうゲームもあるよねという感じだった。

DAISOUNANの後、忍流が出るんだけど、実は忍流のあとにDAISOUNANをプレイしている(他の過去作も忍流のあとにプレイしたものが多かった気がする、順番は覚えてない)ので、DAISOUNANの後にプレイした新作は BUNNYBLACK だった。

BUNNYBLACK の思い出

2010年代って実は2000年代ほどにはエロゲ市場縮小してなくて、2012年からは減少傾向が緩やかになってる。パッケージは確実に売れなくなってきてるんだけど、パッケージ買っても最近のPCにはディスクドライブないし、もうダウンロード版でいいよねという感じのユーザも増えてきてるんじゃないかと思う。

そんな2010年代にソフトハウスキャラ第二期を支えたのがBBだと思っていて、BBの後がソフトハウスキャラ第三期。第三期の話は後でするとしてBB1~3の話をする。

BBはソフトハウスキャラには珍しく普通のダンジョンRPGだった。当時は世界樹のヒットもあってダンジョンRPG自体が熱い時期だったのもあったし、出来も荒削りながらもよかった。後発の雪鬼屋がBBよりもずっとソフトハウスキャラらしいゲームでしかもこれまたよく出来ていたので、BBより雪鬼屋のほうが面白かったなとは思うんだけど、それでも続編が出ると決まったときは嬉しかったんだよな。

それででてきたのがBB2で、BB1の悪いところが更に悪くなったようなゲームだった。とにかくダンジョン探索がだるく、ゲームを進めるモチベーションを保つのがきつかった。実際途中でプレイをやめてBB3が出るまで放置していたまである。クリアしてみれば話はちゃんと面白かったんだけど、ダンジョンRPGとしての作り込みをもうちょっとなんとかできなかったのか、という気持ちが強い。その点はBB3でかなり改善されたんだけど、いまにして思うとキャラってそういうやり方をするメーカーではなかったですね。毎回実験作を作ってたのが、ダブル看板にして2プロジェクトを並走させて、片方では同じゲームシステムをベースにブラッシュアップして出して、もう片方では新しいゲームデザインを試行していく、というやり方を取るようになった。

BB3ではダンジョン部分を1や2よりはぐっと遊びやすくし、これにキャラらしいSLG要素を組み合わせてきた。シナリオに関しては、完結したのでよかったですねとは思うんだけど、もうちょっと丁寧にやってほしかったという気持ちもある。騎之助氏は作品を出す毎にテキストを書くスタミナが減っていっているのが目に見えてわかる感じがあり、BB2に出た門を守るお仕事、BB3と、野菜、悪魔娘……少しずつユーザーの不満が高まっていった時期だったと思う。

悪魔娘の看板料理の思い出

悪魔娘の看板料理は新規タイトルながら、DAISOUNAN が南ドミのブラッシュアップ、門を守るお仕事が巣ドラのブラッシュアップだったように、これはブラウン通りのブラッシュアップ作品と見ていい。雪鬼屋をグリンスヴァールの後継作と見るなら、雪鬼屋、BB2、門、BB3、アウトベジタブルズ、悪魔娘と、ここまでアウトベジタブルズ以外に新規の実験タイトルがない。今にして思うとこのへんから新規タイトルの企画がしんどくなってきてたのかもしれない、と思う。

悪魔娘自体はブラウン通りをかなり現代風に遊びやすくしたゲームで、今プレイしてもそれなりに楽しい。ただボリュームはないし、リプレイ性が高いゲームでもない。底が浅い、ということはよく言われていたんだけど、そんなにボリュームが重要か?という気はする。もちろんフルプライスなので、相応のボリュームが求められるのはわかる。もうちょっとレベルカーブを丁寧にしてほしかったという気持ちもある。シナリオも……まあ以前はもっとたくさん読めたなという感じだったんだけど。

手軽に遊べていいゲームだけど、これにフルプライスはきつい。たしかにね。今だとDL版がちょくちょく割引セールされているので、割引セールで買ってプレイしてみてほしい。

その古城に勇者砲あり!の思い出

さて、悪魔娘の後に勇者砲という作品が出た。かる氏が連投しているんだけど、今度は明確に別ラインでの新作、という形になって、ブランドもチーム++と銘打たれている。これはプログラムもシナリオも外注している。既存作のブラッシュアップをするなら内製じゃなくてもいい、という割り切りをしたというわけだ。これがよかったのかどうかは、ちょっとわからない。

ごく個人的には、勇者砲は、チーム++であって従来のキャラではないな、という印象で、キャラっぽいゲームシステムでキャラっぽい世界観なんだけど、ゲームデザインがキャラっぽくないし、シナリオも騎之助節が効いてない。面白かったけど、自分の好きだったキャラのゲームとは違う、まあこのラインでもゲームが出るのは嬉しいのでいいんだけど、物足りなさは正直感じていた。ボリュームに劣る悪魔娘のほうが、個人的にはずっとキャラらしくて好きだったのだ。

しかし個人の気持ちがどうあれ、悪魔娘は一般的には不評で、勇者砲はそこそこ好評だった。うーむ。

あ、でもエッチシーンの尺が伸びたのはよかったと思ってる。そこが一番大きな不満だったんじゃないかな。でもなー、やっぱり俺様和姦レイプが見たかったんだよな……。

チーム++はこの後呪いの魔剣、大樹と二本出してて、呪いの魔剣はウィザクラのブラッシュアップ作品、大樹は勇者砲ベースで侵攻型にアレンジ、と、どちらもちゃんと遊べるゲームになっていた。ソフトハウスキャラは解散しちゃったけど、これくらいの出来でゲームがコンスタントに出てきてほしかった。

プラネットドラゴン、領地貴族はそこそこに面白く、どっちもボードゲームっぽいゲームデザインでそういうのが好きな人にはウケそうだったんだけど、そういうのが好きな人はエロゲーやらなさそうという感じもあり。 悪魔聖女はもう完全にボドゲソリティアっていう感じのゲームデザインだった。デザインが詰めきれないまま出てきてしまった気配があり、もううまいこと企画出してもゲームに昇華できるだけの体力がないのかもしれない、という予感がしていた。

巣作りカリンちゃんの思い出

あとになってから思えば、巣作りカリンちゃんを出して、これでソフトハウスキャラを畳もう、ということだったのかもしれない。巣作りカリンちゃんは、勇者砲以上に巣作りドラゴンに寄せたブラッシュアップ作品で、巣作りドラゴンぽいんだけど、巣ドラと比べるとゲームデザインは緩めというか、周回前提にして、初周攻略を突き詰められるような調整は諦めて、その代わり周回後のハイスコアチャレンジを目指せるように高難度まで作ってある。ハイスコア目指すのはそれなりに大変なのでやりがいはあるものの、ここの調整はやや甘く、時間が足りなかったようには見える。まあ延期もできなかろうし、仕方ない。時間がないなりに出来はちゃんと面白くなっており、恋姫キャラが騎之助節シナリオで読めるのもそれも味でしょうという感じがある。恋姫ファンからはあまり評判が芳しくなかったりはするものの、恋姫に忠実であるべきかというとそうも思わない。ここまでデレデレになる桂花が見られるのは巣作りカリンちゃんだけ!

ソフトハウスキャラのゲームの話

さて、ソフトハウスキャラはずっとSLG、たまにSRPGとかRPGを作って出しているメーカーだったので、読むゲームよりは遊ぶゲームのメーカーだった。それでもエロゲなので、読むゲームとしての側面も持っている。

昨今のスマートフォンゲームなんかはおおよそこの読むゲームパートつきの遊ぶゲームになっている。各メーカーが読むゲームパートを遊ぶゲームパートのテンポを崩さないように組み込むことに苦心してるんだけど、キャラのゲームは、ここのバランス感覚がよかった。とにかく読むパートが入っても邪魔にならない。というよりは、遊ぶパートと読むパートがちゃんと両輪になっていた。イベントを起こすためにSLGパートで工夫をして、イベントが起きたら次のイベントを起こすためにまたSLGパートを工夫して……というサイクルがちゃんと効くようになっていた。そのサイクルの効きのよしあしはゲームによってまちまちではあったんだけど、ソフトハウスキャラのゲームはここは外さなかったと思う。思い出補正もあるかもしれない。DAISOINANなんかは、早くイベントパートに辿り着かせてくれ、ってなるくらいだったので、調整が失敗してるゲームもあったのは確かだし。まあでも「ゲームの邪魔にならない読むパート」ではなく「ゲームを遊ばせるための読むパート」が機能しているという感じがあった。
アリスソフトもこれが上手いメーカーだと思うんだけど、アリスソフトSLGは全体的には詰将棋っぽいというか、究極的にはチャート作ってそのようにやる、という感じになりがちで、そうなると初見プレイでイベントを見てやり直して見たイベントはスキップ、みたいな、ちょっとぶつ切りのプレイフィールになってしまうゲームも少なからずあったと思う。まあちょっとソフトハウスキャラ贔屓ではあるんだけど。

エウシュリーはおおよそRPGメーカーなので、RPGのイベントシーンが入るところにイベントシーンが入ってくる、という感じで、まあプレイヤーはそういうの別に慣れてるし不満ないですね、という感じ。遊びにくいと思ったことはあんまりなく、RPGらしくよく仕上がっていた。ただ、ゲームシステム上の恩恵を受けるためにイベントを消化している、と思う場面がないでもなかった。これはイベントシーンに充分な尺があって、ゲームパートと気軽に行き来出来る感じがなかったからかなーと思っている。これは最近のスマートフォンゲームのキャラクターエピソードを読ませるタイプのやつでも同じようなことをときおり思う。読むと石もらえるから読むけど、読んでられないので結局スキップして後で詠みたくなったときに読むか、みたいな。で、読まない。そういうことがある。

ソフトハウスキャラはテキストが薄いとよく言われるんだけど、とにかくゲームを邪魔しないようにデッドウェイトを削いだデザインなんだと思う。重要でないイベントシーンは短く、テンポよく、プレイヤーがゲームパートで工夫してようやく辿り着くような重要なイベントシーンでは、比較的尺を割く、ということをやっている。これは別チームの勇者砲なんかでもちゃんとそうなっていて感心した覚えがある。勇者砲は全体的にテキストボリュームを増しているんだけど、幕間のイベントは短くテンポよく、ということは意識されてた感じがある。

最近遊んでるスマートフォンゲームだと、たとえばワールドフリッパーはそのへんの遊びやすさにはかなり気を遣っている。キャラクターエピソードもテンポよくて演出待ちが苦にならないし、これくらいなら読んでもいいか、となる。ストーリーを進めていても、ストーリー間のイベントシーンがそれほど邪魔には感じない。しいていうと、せっかくイベントシーンとゲームシーンで同じ画面デザインが使えるんだから、シームレスにゲームパートに入ってほしい、という気持ちはあるんだけど、それはちょっと贅沢かもしれない。

ともあれ、ソフトハウスキャラのゲームは、テキストを読ませるテンポ感に関しては、かなり気配りができていたと思う。

悲しいかな、ユーザーはテンポよくサクサク読めてあっという間に終わってしまうゲームのことは、短い、薄い、ボリューム不足、と評する。別の理由でボリュームが足りていないゲームもあったので、それは一面では正しいんだけど、テキストのせいだけではないですね、と思っているし、それは言っていきたい。そんでもって、テキストを水増ししてゲームのテンポを殺すくらいなら、テキスト排除してゲームに徹してくれよ、と思う。そのへん、テキストを読みたいエロゲユーザのニーズに噛み合わなくて、厳しいかもしれない。同人ゲーム市場見てるとテキストが絶対に必要とは思わないんだけどな。

まあなのでプレイヤーが快適に読めるゲームだったらプレイヤーはちゃんとゲーム買って遊んでくれるのかっていうと必ずしもそうとは言えず、快適に読ませることと、プレイヤーに充実感を与えるために多少読むのに力をかけさせること、を両立しないといけなくて、SLGだと後者をSLGパートで担える、ただソフトハウスキャラは晩年にはSLG部分の作り込みが甘くなって、プレイフィールがどんどん浅くなってしまった……と思っている。

おわり

いつくらいからかわからないんだけどCi-enをはじめたくらいから終わりの気配は感じていた。特にそれが強くなったのは、Ci-enの有料プランをなくしたとき。もうこのときに畳むことが決定されてたんだと思う。だから解散って聞いたときに、やっぱり、と思った。だから寂しくないかというと寂しいに決まってるんだけど、まあでもしょうがないよね……とも思う。

ボドゲが好きな人たちが作ってたんだろうなあとずっと思っていた。ボドゲファンかつアマチュアゲーム制作者としては、かつてのソフトハウスキャラのゲームが好きだった人に、「キャラのゲームっぽいね!」って言ってくれるような、そんな面白いゲームが作りたいなと思う。作っていく。