死神娼館はどうだったら面白かったのか

またこの話かという感じなんだけど、ゲームを作る上で大事なことなので備忘のために書いておきます。

1.0.9が来て、ひとまず冒険者の宿運営ゲームとしては遊べるようになったのではないかという気はしますが、逆に言うとこれくる前の段階では嗜好品を含むレシピはほぼ使えない、ゲーム後半で解放された下位レシピのほとんどは死にレシピだったということになります。いいのかそれで……。

遊べることと遊んで面白いことはまた別ですが、遊べるようになったのはとりあえずいいと思います。

冒険者の宿と夢での娼館の二部構成なのはアイデア自体は悪くないですが、相互の影響がゲームに昇華できてないので、そこが一番の問題と感じています。

ヒロインは密着モードで調教できます。これは時間以外のコストはありません。嫌われることをやってペナルティがあるとかっていうこともありません。時間かけてヒロインとイチャコラして夢の娼館に送ったらそのへんのモブなんか相手にならなくてヒロイン無双になります。つまり娼館部分に経営要素はありません。
ヒロイン以外は調教できないので意識して育成ということはできません。売春が得意そうなキャラを雇用してレベルを上げるというだけになります。レベル上げて娼館で稼げるようにしたところでなんかあるかというと、宿屋経営パートへの正のフィードバックは特にありません。

もし娼館ゲームとしてちゃんと面白いものに仕上げるのであれば、育成と実戦が両輪として機能するようにする必要があります。育成をすることで実戦での収益性を高め、実戦によって資金を得て育成を充実させるというサイクルがこのゲームにはなくて、育成と実戦がバラバラに存在するだけです。実戦で得られる報酬がダンジョンパート攻略の装備の素材なので、ゲームの進行には役に立ちます。ただしやらなくてもクリアできます。

eramaker がなぜあれだけ発展したかというと、調教して売るというところが根本的にとてもよくできているからなんですよね。安くて調教しやすいけど売値も安いという奴隷をまず買って、それを元手により高い奴隷を買ってより高く売る、というサイクルで、収支をエスカレーションさせる。拡大再生産の形がちゃんと取れています。これは Handful Nightmare でもそうですし、ビフレストの魔物娼館とかウラレタウンもそうです。はるうられはちょっと詰将棋ぽいというか、SLGとしての自由度はあんまりないので個人的には好みではないんですが、とはいえ、はるうられにしたってこの拡大再生産の枠を逸脱するものではありません。

宿屋経営パートに関してはちゃんと拡大再生産の形になっています。宿屋の経営をちゃんとやらないとストーリー上のミッションを達成できないようになっています。ただ、レールの上を走らされているという感覚は否めないです。経営を工夫してそれでストーリーに動きが出るという類ではなく、突発的なアクシデントで金を要求されるので、工面するために投資を止める、ということをやるわけですけど、やらされてる感が強い。
金が手に入ればどういう方法でもいいので、レシピはフレーバーにすぎなくなります。希少素材を使った商品はより高く売れるらしいんですけど、そこまでガチガチのチューニングは要求されなくて、顔のいい女をカウンターに立たせて原価の5倍に設定した商品を陳列しておけば客が勝手にそれ以上の額で買っていきます。商品ランクごとの差とかも自分でデータとってなんかしたわけではないんですけどそこを意識しないといけないほどの差は体感では特にわからないので何も考えなくていい気がします。

たとえば特定の系統の商品を売ってると特定のキャラクターがやってくるみたいな感じにしてパラレルでシナリオが走るようになってたらよかったと思うんですが、今作のストーリーは完全にシーケンシャルに一人ずつヒロインを攻略するという構造なのでこれは無理でしょう。フラグ管理もむずかしくなってしまうのでむずかしいと思います。でもそうなっているほうがSLGというジャンルとしては正しいですね。SLGではプレイヤーが考えてなんかした、その結果物語が動いたという実感をもっと大切にしたほうがいい。まあRPGでも本当はそうなんですけど。

事業投資でまとめてどかんと金を積んで問題を解決するだけ、というのも、もうちょっとやりようあったんじゃないかなと思うところがあります。
特定の商品を一定以上流通させるとフラグが立つような仕組みは、自身の店が実際に世界に影響を及ぼしていることをわかりやすく実感できます。そうしたほうがいい場面はいくつかあったと思います。次回作こういう形のゲーム作ることはもうしばらくないと思いますけど、もしストーリー色強めの経営SLGパートあるゲーム作る人がいたらそのへん念頭に置くと面白いゲームが作れると思います。

あと、特定のレシピが解放されてそれを実際に作ったら話が動くのとかはアトリエシリーズとかそうなんですけど、こういう仕組みになっているとレシピ解放してあたらしい品物を作っていくことに明確に意味が生まれます。今作、序盤のレシピの材料入れ替えるだけでも相当稼げてしまうので、あたらしいレシピを使っていくことにゲーム的なメリットがあんまりありません。もちろんある程度は役に立ちます。材料スロット数が多い料理ほど高額にしやすいとかはあります。でもそれくらいです。いくつか趣味的なレシピがあるくらいならともかく、3分の2くらいはなくても構わないですね。特に終盤の高ランクレシピにいたってはもはや解放すらしなくてよくて、見ないままクリアとかふつうにあると思います。攻略上必要ではないのでしょうがない。

ユーザーインターフェースは、ぱっと見はキレイに整ってるように見える。見栄えはいいです。見栄えだけがよくて実際の使い心地は悪いです。UIデザインの出来がいいみたいなことを言ってる人がいたのでちょっと強めに書くんですが、デザインっていうのは設計のことで見栄えのことではまったくないです。

一番プレイしててしんどかったのが「マウスオーバー時の情報表示枠がメッセージウインドウ枠と同じ位置に出る」ことです。メッセージが表示されているとこの情報表示枠が見えなくなる。目に見えない内部的なカーソル位置がマウスオーバーの位置と違ったまま固定されているということがたびたび起こるのもしんどいですが、それはバグなので直しようがあります。でも、メッセージウインドウ枠と同じ位置に情報表示枠があるというのは設計上の欠陥で、画面ごと直す必要があります。まあ直せないと思うのでこのままになるでしょう。そもそも画面下部(特に右下)って見落としやすいので、情報表示枠に使うのはあまり適切ではないです。画面上部にポップする形のほうがよかったでしょうね。

全体的に、常時表示されていてほしい情報が常時出ていないというのも目立ちます。たとえば店画面では現在のゲームの進行スピードを画面のどっかに出すだけで、「このゲームは進行スピードを変えられるゲームである」ということがはっきりわかります。「説明書に書いてあるから読んでね」とかいうのはダメなデザインを免罪しません。ダンジョン探索中の残り金メダル枚数とかも画面のどっかに出しとくだけでいいんですけど、イベント発生したときに何枚だっけ?ってなる。

今持ってる素材・商品の一覧画面みたいなのもなんでないのかよくわかりません。これがないからプレイヤーが試行錯誤しようにも網羅的にどの素材が足りてない、希少なのか直感的に理解できないという状況だったと思うんですけど。

娼館でマッカとエレメントを交換するときに武器のレシピが見えないのもわりと不満です。今どの武器作ろうとしててどのエレメントがほしかったのか、娼館画面にいるときにはもう忘れてます。

あとプレイルームでヒロインのプレイ回数確認できるようになってなかったと思うんですけどこれもなんででしたっけ。各種プレイは初回にステータスにボーナスがあるので、ひととおり1回ずつプレイさせるのがいいと思うんですけど、どれやってどれやってないかとか、ストーリー攻略しながらだと忘れませんか?

という具合にアクセスしたい情報にアクセスしたいときにアクセスできない場面がとても多いです。

アイテム図鑑、エネミー図鑑はあんまり機能してません。これ必要でしたか? 単にコレクター要素でしかなく、ゲーム的には意味がありません。
もちろん活用はいくらでもできます。たとえば素材の希少性の目安になる情報がわかるようになってるとかあればよかったですね。繰り返しになるんですが情報開示もろくにしてないくせに手探りでやってねっていうのは本当になんなのって感じです。断片的な手がかりくらいは用意しましょうよ。

ぼくは親切なユーザーではないので、これを直接作者に伝えたりはしません。この記事はほとんど自分用です。ほぼストレス解消のために書いています。ただまあ、これを読んだ人が、今作をゲームデザインアンチパターンとして反面教師にできる手がかりになれば幸いですねという感じなので、この記事を公開ウェブ上に残しておきます。