オークはたぶん豚の味がしない

表題通り。

和製ファンタジーではオークの肉を豚肉の代用として使うことがとても多い。そもそもオークが豚顔であるべきかどうかということはここではおいておくとして、豚頭の二足歩行の生き物の肉を獲ってきて、これが豚肉の味がするかというと、たぶんしないんじゃないかなあと思う。

まず、豚と、豚の原種であるところの猪とを比べてすら、食べてわかるレベルで味が違う。豚というのは人間が食べやすいように品種改良されてきた結果のものだということがよくわかる。一番の違いは肉質で、基本的には豚のほうがやわらかく食べやすい。その一点だけで豚のほうが美味だとは言わない。筋肉質な身を噛み締めたときにじわりと旨味が来る、そういう体験ができるのはやはり猪で、豚ではなかなか難しい。

さて、ではオークはどうなのかというと、まずそもそも二足歩行をしているという時点で、おおよその四足獣と味が違うだろうと思ったほうがいいように思う。身もふたもない話をすると、豚にたとえられるような太った二足歩行の生き物の味というのは、太った人間の肉の味が一番近かろう。

皮下脂肪をたっぷり蓄えていようと、その身体を二本の脚で支えるというのは相応の筋肉が必要で、おそらくスネ肉やモモ肉は筋肉質で硬い。腹や背の肉は脂乗りがよさそうだが、脂ぎっていてくどいかもしれない。

味は食べているものの影響を受けやすい。犬歯の生えた獰猛な顔で描かれるようなオークが草食性というのはちょっと考えづらいところがあるので、肉食性の強い雑食性だろう。基本的には肉食性が強いと肉にも獣臭さがつきやすいから、豚肉ほどあっさりとは食べられないんじゃないかと思う。

しかし豚肉というのは本当にユニークな味だと思う。鶏肉のような味の肉はたくさんある一方で、「豚肉のような味」とたとえられる肉は知らない。だからこそ豚のような味がする豚でない生き物というのを考えにくいというのはある。

まあでもフィクションをたのしむときはこのようなことは考えずにたのしんだほうがよかろうと思う。

今回はここまで。