持続可能なたんぱく質生産の話

ちょっと真面目な話。

まずわたしはヴィーガンでもないしオルタナティブミートや昆虫食を積極的に推進する立場でもないんだけど、それはそれとして、どこかでたんぱく質需要が供給を超えることは疑いようのない事実だと思っていて、じゃあどうするべきかということは考えないといけないと感じている。

われわれが食べている牛や豚、鶏などの畜肉は、基本的にはたんぱく質を添加された飼料によって肥育されている。そのたんぱく源は主に大豆で、畜産のために広大な面積を使って大豆を生産している。これはとても非効率に見えるが、一方、大豆は世界中どこでも生産できるわけではなく、大豆が生産できないような土地でも、そのような環境に耐えうる畜産動物を肥育することができれば、限られた土地を有効的に活用できる。また、牛は肉牛だけでなく乳牛もいるし、鶏も鶏卵用の鶏がおり、出荷される肉ベースでだけたんぱく質効率を考えるのは実態には即していない。それでも大豆を直接利用するほうが、もちろん効率がいい。

他のたんぱく質として魚介類があるが、これも限りがあるので、たとえば魚を養殖して増やそうということになるが、その魚を育てるためにたんぱく質が必要になる。大型魚のために小型魚を獲ってきて飼料にして肥育するということをやっているが、やはりこれも効率が悪い。たんぱく質を添加した合成飼料で置き換えようということは進められているが、そのためのたんぱく質はやはり大豆などを使うことになるので、大豆を直接使うよりも効率は悪くなってしまう。

たとえば未利用魚として放棄されている魚を飼料に加工できたりするとロスが減らせるんじゃないのかと思うんだけど、ロスは減らせても、結局それだけで賄うことはできないので、どこかでやはりたんぱく質の負荷がかかることになるだろう。

で、近年注目されているのが昆虫。昆虫はたんぱく質効率がいいので、昆虫を育てて食べればいいんじゃないかということである。これは合理的なんだけど、その昆虫としてコオロギを活用しよう、となっているのにはやや納得がいっていない。基本的にコオロギは雑食性で、たんぱく質を求めて共食いをしたりする。コオロギを育てるにはたんぱく質が必要になる、じゃあそのたんぱく源ってどこから供給するのか。結局大豆になるんじゃないの?と思っている。だったらコオロギ粉末をパンに練り込む前に、大豆が先だろ、ってなる。もちろんおからパウダー入りのパンの存在は知ってて、それが成功したかというと、まあ成功はしてないんだよな。そうでないパンに比べて食味が劣るんだからそら無理な話よ。だからコオロギも結局どれだけSDGsだなんだと声高に叫んだところで、そこをクリアできないかぎりはおからパン以上のものにはなりえないと思うし、今からでもいいからおいしいおからパン目指したほうがいいよ。

また、当たり前ながら昆虫は変温動物なので、環境の変化に強いとはいいがたい。生産工場を作って温度や湿度を管理することになると思うが、その場合に排出される二酸化炭素のことを考えると、一概に環境負荷が低いとは言えない気がする。

コオロギより先に、人類が養殖に成功した実績のあるカイコのほうがいいんじゃないの?ということも思っている。カイコは野生回帰能力を失っているので脱走のリスクがほとんどなく、また、草食性で人間とたんぱく質を奪い合う必要がない。餌が限定的であることが課題という向きもあるが、たとえばキャッサバの葉を飼料として与えるというようなことも行われているらしい。キャッサバはイモとしても利用価値があるが、葉も利用できるとなれば効率がいい。

大豆でコオロギを育てるようなことは本末転倒というか、畜産動物よりはマシだけど、くらいのものでしかないような気がする。だったらべつに培養肉工場でもよくないかとも思う。

特に結論はないので投げっぱなし。でもシルクミートにはそこそこ可能性は感じる。人間が直接食う以外に、養殖魚の餌にしてもいいし。