エロゲがこの十数年の間ユーザを獲得し続けられなかったこと

エロゲの衰退って今に始まったことではなくて、ぼくがエロゲプレイできる歳になったときがピークでそこから先ずっと売上減少し続けてます。
具体的に言うと2005年から2010年にかけて50%売上減ってます。むしろ2010年から2015年は横ばい気味です。なのでこの2005年から2010年時点の話をしないとダメで、2010年代のユーザーのニーズにマッチしていないからエロゲが売れてない、とかっていうのはやや的はずれな話になってしまう。

http://www.sofurin.org/img/1992-2016results.jpg

ソフ倫のレポート。ソフ倫以外の機関を通してるゲームもあったけどおおむねこうだったと見ていいんじゃないかと思います。

2005年から2006年にかけての売上減はいまいちピンと来ないんですが、2003年とか2005年までって

こういう時代ですよ。この頃が強すぎたのが2006年に落ち着いたと見てもそれはそんなに不思議なことではない。ちなみに2006年のベストセラーは戦国ランスだったと記憶しています。ぼくのまわりもわりとみんな戦国ランスやってた。
それでも2005年から20%近く減ってるので、この時点で結構ユーザーが離脱してるんですけど、これ仮説なんですけど2003年に18歳だったユーザーはこの頃就活したり卒論やったりでゲームどころではなかった可能性があります。いやでもまわりはみんな普通にやってたな……。
東方とひぐらしがじわじわブームになりはじめたのが2004~5年頃です。
2006年にニコニコ動画がはじまって、東方、初音ミクim@sの時代が来ます。ここがターニングポイントだったのではないかと思ってる。
ハルヒゼロの使い魔のアニメが2006年で、このへんからライトノベルブームが来ます。実験的な作品もライトノベルから発信されるようになっていきますし、エロゲのライターがラノベを書き始めるようになり、やがてゼロ年代が終わります。

ところで俺妹はアニメよりも先に原作がしっかり話題になりましたが、これはバックグラウンドにエロゲがありました。そもそも俺妹の「俺の妹がこんなにかわいいわけがない」というタイトルが「恋する妹はせつなくてお兄ちゃんを想うとすぐなんとか」を意識してないわけがないし、読者層にエロゲユーザーがいることを意識してたはずなんですよね。作中にアキバblogが出てきたりもする。だからこれくらいの時代は、まだエロゲユーザー人口が減少傾向にあったとはいえ、エロゲをバックグラウンドに持つ受け手が相当数いる時代ではありました。

2010年代の前半、なんだかんだビッグタイトルは出ています。2011年には震災で延期しつつも穢翼のユースティアが発売、でもこの年に一番話題を持っていったコンテンツって、言うまでもなくまどマギだったじゃないですか。このへんで主導権が深夜アニメに移りきった感じがあります。ところでまどマギ虚淵玄脚本なんですけど、虚淵玄のある種の「悪名」が効いていたのも一因だったかなあというとは思っていて、でもそれだけでヒットする作品ではなかったです。シャフトがあり、虚淵玄があり、というのをちゃんと両輪として評価しないとダメでしょう。俺妹がエロゲカルチャーをバックグラウンドに話題になったのとはちょっと話が違う。

2015年、カスタムメイド3D2が発売。2018年に一部互換のある上位版カスタムオーダーメイド3D2が出た今も DLC があたらしく発売されるくらいには息の長いコンテンツになってて、今の時代にマッチした売り方ができてるゲームのひとつだと思っていますが、こういうゲームじゃないと生き残れないくらいには厳しい状況になってきてるのは、実際2015年時点ですでに間違いなかったと思います。
同年に出たサノバウィッチ、めちゃくちゃおもしろかったですし、このゲームでしか味わえない体験をしたと思っていますし、ツイッターに若いユーザーの感想がちらほら見られたことを思うと新規ユーザーも獲得できてたんじゃないですかと思っています。エロゲが売れなくなったのはマンネリ化が原因とか言われてますけど、けっきょくのところ手堅くしっかり面白い学園モノがトップセールスにいたりはするし、それが新規ユーザーを獲得できてたりはする。中高生は学園モノのコンテンツに触れておとなになるのでその延長線上のコンテンツはある程度妥当なんですよね。

最近でも新規ユーザーまったくいないかというとエロゲの感想ツイート見るに割と若い世代はいます。そりゃいるよねという感じ。でもそもそも少子化でめちゃくちゃユーザ減ってるので新規ユーザーが減るのは当たり前ですね。一方古参ユーザーは可処分時間が減っていくので年々離脱していきます。これで維持できるわけがないので、今の時代ユーザー数を減らさずに維持できるコンテンツというのは「常に新規ユーザーを獲得し続けてパイを拡大し続けられるコンテンツ」のことになります。そりゃ無理だよ。

それはそれとして、別に時代の最先端にいなくてもいいじゃんとは思っていて、たとえばなろうだってやってることは紺碧の艦隊からそんなに変わってない作品もたくさんあるんだけど、それでいいじゃん、と思ってる。言うてみんなそんなにコンテンツの最先端に飛びついてますか? 話題になってから触れてませんか? そもそも流行って最先端だから流行ってるわけじゃなくない? とかいろいろ思うことはあり、ところで今でも東方 project は Windows 初期作にあたらしく参入する若いユーザーがいるらしく、コンテンツが盤石であることの強さみたいなものを感じたりします。文化が栄えたり廃れたりすること、時代の先端にいるかどうかには寄らないんじゃないかな。窓口が広く開かれていることの重要性みたいなものは感じるけど。

こちらからは以上です。