ウマ娘から競馬に興味を持った人向けの今週のレース情報

中央競馬は基本的に毎週土日(月曜祝日のときは日祝などもあります)にレースがあり、日曜は毎週重賞競走があります。土曜は重賞がないときもありますが、準重賞とされるリステッド競争か、オープン特別競走があります。今週の土曜、つまり今日は重賞競走がありません。


今日のメインレースはリステッド競争の若駒ステークス。リステッド競争というのは重賞ではないけど重賞に次ぐ重要な競争という位置づけのレースなんですが、とりあえずなんかちょっと普通の競争と違うんだなと思ってもらえればオーケーです。

若駒ステークスは3歳馬限定になっています。3歳馬というのはまだ幼い2歳馬とも、大人になった4歳以上の馬とも違う特別な年齢の馬で、ダービーをはじめとしたクラシック競争には3歳馬しか出走できません。3歳馬同士で競わせることでその能力を図るという主旨なので3歳に限定しています。

そのダービーを目指すレースなので若駒ステークスも3歳馬限定の競争になります。ざっくり言うとここからダービーに挑む馬が出てくるかもというレースというわけです。トウカイテイオーディープインパクトが走ったレースですし、ここ10年でもダービー馬マカヒキ、ダービー3着馬ヴェロックスが出ています。重賞でないなりにそれなりに注目すべきというところですね。

何が勝つとかは正直わからないので予想の材料にするのはおすすめしないのですが、ウマ娘に縁のあるという観点で三頭紹介します。

  • レヴェッツァ
  • アドマイヤザーゲ
  • ヴァリアメンテ

三頭とも父がドゥラメンテというダービー馬で、これらがドゥラメンテにとっての初年度の産駒になります。ドゥラメンテウマ娘に出てこないのですが、ドゥラメンテの母アドマイヤグルーヴ、そのまた母がエアグルーヴです。

エアグルーヴは90年代の馬ですが、こうやって娘、孫を通じて現代にその血が受け継がれてるんですね。ドゥラメンテは期待の種牡馬なのでこれからもこうして目にする機会が増えると思います。

また、ドゥラメンテの父キングカメハメハはこちらもダービー馬なんですが、このキングカメハメハの父 Kingmamboエルコンドルパサーの父です。サラブレッドは母が同じときにきょうだいと呼ぶので、キングカメハメハエルコンドルパサーは別にきょうだいではないんですが、こういうところに血の繋がりがあったりはします。

三頭とも母系は海外の血統なのでウマ娘的な話は特にありません。
ヴァリアメンテの母父DynaformerがRoberto産駒ということくらいですね。Robertoの子にはグラスワンダーの父Silver Hawkナリタブライアンマヤノトップガンの父ブライアンズタイムライスシャワーの父リアルシャダイがいます。
Robertoというのはそれくらい種牡馬の父として成功した種牡馬なので、どこかしらにその名前を見ることができます。


日曜のメインレースはアメリカジョッキークラブカップ(長いのでAJCCと略します)と東海ステークスで、前者は4歳以上の芝のレース、後者は4歳以上のダートの、いずれも GII レースです。ウマ娘ではダートの話はあんまりしなくて、シンデレラグレイでのオグリキャップ笠松時代くらいなんですが、シンコウウインディスマートファルコンといったダート馬もいますし、芝ダートの両方で活躍したアグネスデジタルもいます。このあたりの馬にフォーカス当てた話は今のところないですしメインキャラと絡ませるのも難しいのでアニメではやらなさそうではあるんですが(というかアプリが出るとしてダート馬これだけしかいなくてどうするんだろう? エルコンドルパサーがダートでデビューしたりはしているものの)。

さておき、まずAJCCから。

一番人気になっているアリストテレスは昨年の菊花賞2着馬で、重賞勝ちこそはないものの無敗の三冠馬にクビ差2着ということで期待されているんだと思います。
父はエピファネイア菊花賞ジャパンカップを勝ったGI馬です。エピファネイアの母シーザリオスペシャルウィークの子で、走ったレースは少ないんですが、その少ない出走回数の中で国内の優駿牝馬アメリカのアメリカンオークスの二つのGIを勝っています。シーザリオもまたエアグルーヴのように現役時に活躍しながら繁殖牝馬としても優秀な産駒を輩出した名牝と言えると思います。

三番人気のヴェルトライゼンデは父がドリームジャーニー朝日杯フューチュリティステークス宝塚記念有馬記念の両グランプリを制したGI馬です。
ドリームジャーニーの母オリエンタルアートメジロマックイーンの子で、自身は現役時には活躍しませんでしたが、その子からはドリームジャーニーオルフェーヴルの2頭のGI馬を輩出。二頭とも父ステイゴールドと母オリエンタルアートの全きょうだいでした。
ステイゴールドと母の父メジロマックイーンの組み合わせはドリームジャーニーオルフェーヴルの成功によって好相性とされ、後に同じく母父メジロマックイーン繁殖牝馬ポイントフラッグとステイゴールドの交配によってゴールドシップが生まれています。

五番人気のウインマリリンは出走馬唯一の牝馬。このウインマリリンの父はジャパンカップを勝ったスクリーンヒーロー。そのまた父がグラスワンダーです。グラスワンダー種牡馬としてはステイゴールドディープインパクトほどにはGI馬を出していないのですが、その中からスクリーンヒーローという偉大な種牡馬を輩出しています。スクリーンヒーローは現役時こそジャパンカップを勝ったのみですが、初年度産駒のゴールドアクター有馬記念を勝ち、モーリスは GI をなんと6勝。モーリスは父を超える大活躍をし、歴史的な名馬となりました。ゴールドアクター、モーリスらの活躍によってスクリーンヒーローの評判も急上昇し、当初30万円だった種付料は2017年には700万円になり、その後も重賞馬を輩出しています。
ウインマリリンも重賞を勝っている馬で、オークスではデアリングタクトの半馬身差に迫って2着に入っています。

13番人気、穴馬ジャコマルですが、父ダノンシャンティフジキセキの子です。サイレンススズカスペシャルウィークの父はサンデーサイレンスという日本で最も成功した種牡馬なんですが、そのサンデーサイレンスの初年度産駒の一頭がフジキセキです。フジキセキサンデーサイレンスの子の中では種牡馬としてよく成功した馬で、多くの重賞馬、GI馬を排出しました。そのうちの一頭がダノンシャンティで、NHKマイルカップを勝っています。


で、次が東海ステークスなんですが、母父スペシャルウィークや母父フジキセキ、父の母エアグルーヴなどはもう各馬について書いてしまったのでそれ以外の馬を。といっても一頭だけなんですが。

四番人気のオーヴェルニュ。父はスマートファルコンです。スマートファルコンは砂のサイレンススズカの異名を持つ馬で、地方交流GI含むGIを6連勝というすさまじい成績を残しています。
オーヴェルニュの母の父タニノギムレットウオッカの父です。タニノギムレットはダービー馬で、ウオッカ牝馬だったのですがダービーに挑戦。史上三頭目牝馬でのダービー制覇を達成し、父娘ともにダービー馬となりました。
こうしてみるとなかなかいい血統ですね。重賞勝ちはまだないですが、オープン馬に昇格して4戦目でリステッド競争を勝ち、そのまま二連勝でここに来ているので、もしかしたらいいところまで行くかもしれません。

あとこれはウマ娘とは直接は関係ないんですが、メモリーコウという馬はなかなかすごい血統で、父エスポワールシチーの母エミネントシチーは母の母の母……とたどっていくとチップトップという馬に行き当たります。この一族をチップトップ系と呼んでいて、日本古来の名牝系なのですが、現在は衰退しつつあり、いまや貴重な血統になっています。エスポワールシチーは牡馬なので牝系を継承していくことはできないですし。
チップトップ系の馬にはシルクジャスティスゴールドシチーがいます。ゴールドシチーウマ娘にも出てきますね。
母系をたどっていくと四代母の父にシンザンがいます。戦後の血統とはいえ、それでも結構古い血で、それが綿々と受け継がれているのを見るとちょっと感慨深いものがあります。ちなみにメモリーコウはこの牝系ではよく活躍している方で、こうして重賞に挑戦できるくらいの馬なわけですから、日本古来の血統であってもこうして現代でもちゃんと走れるんだなあと思ったりします。さすがに重賞勝ちは厳しそうではありますが……。


ウマ娘は最近の馬はあんまり出てこなくて、キタサンブラックサトノダイヤモンドゴールドシップなどいますが、現代の馬でも血統を見ると90年代の名馬の名前を見出すことができて、今とちゃんと地続きだと感じられると思います。現代では断絶してしまった、断絶しつつある父系もありますし、牧場が閉鎖したり馬主をやめたりして使われなくなった冠名というのも多くありますが、当時に戦ったライバルが血統表には残っていますし、その血統を通じて、あの馬のライバルだったんだぞ、と人々の記憶に残ります。そうして受け継いでいけるといいですねと思いますし、ウマ娘はそうして受け継いでいけるゲームだと思っています。

いい話ふうにまとまったところで、こちらからは以上です。